前章(二)-20
「んーっ、んーっ!」
塞がれた口のままで声を上げ、必死の抵抗を見せる貴子。
(流石は子爵の娘だ。しかし、このままでは埒が明かないな)
伝一郎は仕方なく、奥の手を出す事にした。貴子の耳許で囁く様に言った。
「義母さま。香山みたいな下男の慰み者になって、身体の情欲は抑えられたのですか?」
途端に、貴子は目を大きく見開き、抵抗を辞めた。
「夜中とは言え、幾らも離れていない僕の部屋迄、義母さまの嬌声が聞こえて来て、こっちは悶々として眠れませんでしたよ。
おかげで、こっちも……」
伝一郎は貴子の右手を取り、自身の股間に当てがった。既に淫茎は硬く漲っていた。
「い、いやっ!」
「義母さまのせいで、こんなに成ったままなんだ。責任取ってよ!」
半ば、子供の駄々の様な屁理屈を付け、伝一郎は、貴子の露になった乳房に吸い付いた。菊代と目交う時の優しさは無く、思い切り強く。
「い、痛い!」
大ぶりな貴子の乳房を鷲掴みにし、親指と人差し指で乳首を挟み、つねる様に捻る。貴子は痛みに耐えかねて身をくねらせ声を挙げるが、先程迄の抵抗は見せなかった。
(もう諦めたのか……詰まらんな。もっと抵抗してくれないと)
──嫌がる者を力で屈服させ、下僕の様に従わせる。其れが子爵の娘で僕の義母なんて、最高の気分じゃないか!
実母と同衾(どうきん)しただけでなく、その母との子を成すと言う忌まわしげな畜生らしく、その整った顔立ちからは想像出来ない気違いの思考。伝一郎は、己の思考に酔っていた。
執拗な乳房への責め。最初は、苦悶の声を挙げていた貴子だが、やがて痛みと共に、身体の奥が疼く様な不思議な感覚に戸惑っていた。相変わらず痛いのだが、責めが止んだ時には、心地よい余韻が身体の中を駆け巡るのだ。
(な、何故……こんな辱しめを受けているのに)
貴子の戸惑いは無理も無い。彼女自身、男は、夫の伝衛門と執事の香山以外知らず、況してや夫とは子を成す為で有り、執事の香山とは、我が子を失った侘びしさを紛らわす故の事で、情欲に身を焦がし、心の底から男を欲した事など無かった。
その情欲を、手練れの伝一郎が呼び覚まそうとしていた。
貴子の身体は熱を帯び、汗ばんで来た。頃合いは良しと思った伝一郎は、右手を乳房から下へと向かわせる。指先が鳩尾から臍へと這いずり、やがてズロースの合わせ目から内へと滑り込んだ。
「や、辞めて!」
本能的に、身を固くする貴子。だが、内腿を閉めるより素早く、伝一郎の指は女陰(ほと)を割って、蜜壺へと潜り込んだ。
中は、既に蜜が染み出ており、伝一郎の指は何の抵抗もなく、奥深くにまで届いている。それどころか時折、指を締め付けて誘って来ていた。