自我-2
「誠さん、そんなに吸ったら、あたし、おしっこが出ちゃう!」
聞かずに僕は吸いに吸った。やがて腿に頭を挟まれたと思ったら、熱いものが溢れるほど口に注がれた。それでも僕は吸い続けた。塊を含んだぬるりとした汁が喉に流れ込んだ。
「そんなことしたら止められないよ! あ!」
急にイーラのほうがこすりつけてきた。流れが何度か強くなり、しずくになるまで筋肉が動いていた。
全部してしまったイーラは、僕の顔に座ったまま、恥ずかしそうに口を押さえて
「飲んじゃった? 誠さん、そんなにあたしが欲しかったの?」
「そうだよ!」
僕はイーラの背中に回った。そして、三度、力を入れて奥まで差し込んだ。久しぶりのことに痛がったイーラは、僕が押し込むたびに力を入れて、捻るように中を動かしてきた。複雑な凹凸が肌にこすりつけられた。根元が入ったときには、僕は漏らしてしまっていた。
怒りにも似た熱い思いはそれでも止まらなかった。僕は動き続けた。十二歳の育ちゆく力は、体じゅうを女の歓びで埋めつくしていく。そして命を集めて僕に渡してくる。男の僕はそれを受け、溜まったものを吐き出していく。
「イーラ、離れたくない。」
女の子の溢れる命が、ありとあらゆる穴から漏れ出てくる。声となり、汗となり、においとなって僕を包む。涙と洟と唾に顔は濡れ、下は女のものでなお濡れている。
「でも、でもね、誠さん、あたしも、したいこと、あるんだもの。家族なら、離れても一緒でしょ?」
体も気持ちもこうまで相手を求めてやまないのに、僕たちには、あい対する平等な、独立した自我があるのだ。何のためやら分からない。男女は一つになりたい癖に、結局ぶつかり突き離される。そして思い知らされるのは孤独だ。ラサとするとき、ラサはまるで一人でいなくなってしまうような乱れ方をする。そのとき感じる淋しさに似たものを、僕は今、イーラのこんなにかぐわしい体を抱いているのに、感じつつあった。
もう動けないほど疲れても、僕はキスをやめなかった。それもできなくなると、僕は子供のイーラにすっかり身を投げ出した。
「おなかが熱い。誠さんは大丈夫?」
僕より先に、イーラが顔を上げて言った。
「おばさんたちが帰ってくる前に、シャワー浴びなきゃ。立って、誠さん。」
やはり顔を泣き濡らしていた僕を、女の子は姉か母のごとく導いた。
イーラは風呂場で僕の体を隅々まで洗ってくれた。手が自由に動く幸せを感じると言った。
「髪も洗おうね。」
届かないからとイーラは僕を座らせ、自分は前に立って頭にシャンプーを注いでくれた。細い指先で丁寧に細かく優しく掻いてくれた。
終わって髪を絞ってくれているとき目を開けると、思春期前の女の子の、縦に切れ込んだ若やかな溝が鼻先にあった。愛おしさが胸にこみあげてならなかった。僕はまた口を寄せ、キスをした。
その時だった。真っ赤な血が僕の口元に滴り、唇を濡らした。他人の味だった。夢見心地にぼんやりしていた僕の目は一気に覚めた。赤く染まっていく僕の顔を見たイーラも驚いた表情をした。
「女なんだ。あたし、女なんだ。本当に、誠さんと違うんだ。」
訪れた時に対し、どうしたらいいのか教えてほしいと哀願する目つきだった。
「おいで。」
僕はイーラを連れて上がり、体を拭いてやった。さっきはイーラが姉のように僕を風呂場へ連れてきた。二人の動きは、あたかも互いが互いの自我になったかのような導きあいだったと、僕は気がついた。
「イーラ、僕は、人を好きになるってどういうことか、少しだけ分かった気がする。」
男女が体と心を求め合うしくみなら、後は互いを自我で支えさえすればいいのだ。 当てた手元から真っ赤に染まっていくタオルを見つめながら、僕はそう思った。