過去との決別-3
「ごめんね、待たせちゃって。今鍵空けるから。」
「大丈夫。俺の方こそごめん、急に。」
「ううん・・・。」
そう言いながら奈々子は自分の家へと葵を招いた。
心臓がドクドク言っている。こんな緊張感、久しぶりだった。
いつもの様に葵がソファーに座ると、奈々子は意を決して尋ねた。
「あの・・・話って何・・かな?」
笑顔を作ろうとしてもひきつってしまう。
「奈々子さんもここ、座って。」
葵はポンポンと自分の隣の席を叩いた。
「・・・うん。」
きっと葵にも奈々子の緊張感が伝わっているのだろう。
彼は奈々子の手を取ると、ぎゅっと握りしめた。
「俺の過去・・・奈々子さんに知ってほしい。」
(過去?あれ・・?別れ話とかそういうのじゃないの?)
奈々子は少し拍子抜けする。
(じゃああの子との話するってこと?)
「え?この間、水族館で話してくれなかった?」
「・・・まだ全部話してない。」
奈々子はそう言って俯いた葵の手を握り返して、彼の話を聞くことにした。
葵が久実との出会い、彼女としてきたこと、彼女が好きだったが、
彼女は自分の父親が好きだったこと、家を飛び出して知らない女の家に居候していた事。
しかし、豹介のお蔭で学校に復学したこと、
前にも言ったが奈々子との出会いが自分を変えた事。
すべてを彼女に話した。