齋藤春宮の悩み 〜想い、花開く〜-11
そんなモノを見たら、間違いなく射精する。
瀬里奈とは、回数なぞ忘れるくらいに何度も夜を過ごしているのだが……どうしてこんなに慣れないのかと、紘平は不思議に思っていた。
そして、瀬里奈はこんな自分に呆れていないのかとも。
「っう……!」
唇を噛み、紘平は必死に堪えたが……努力も虚しく、果ててしまう。
「ふ……!」
体の中で紘平が何度も打ち震える感覚に、瀬里奈は声を漏らした。
「うぁ……!」
我ながら早過ぎると思い、紘平は呻き声を上げる。
「んふ」
満足げに、瀬里奈は微笑んだ。
お腹を撫でさすり、紘平を見る。
「たくさん出てる……」
「…………」
紘平は、そっぽを向いた。
ゴム二枚重ねの凸凹仕様でも、瀬里奈の優位は崩れない。
これはやはり……と、紘平は暗澹たる気分に陥る。
「……どうしたの?」
表情の曇りに気が付いて、瀬里奈は尋ねた。
「いや………………………………………………瀬里奈」
悲愴な声に、瀬里奈は眉をひそめる。
「俺、やっぱり…………早い?」
痛ましいくらいデリケートな話題に、瀬里奈は視線をはぐらかした。
「……あたしは、満足してるわよ?」
言って、紘平の頭を胸に抱き寄せる。
「それじゃあ不満?」
それを聞いた紘平は、ふーっ……とため息をついた。
「瀬里奈がイけないの……俺の努力が足りないからだろ?」
「……いったい誰から何吹き込まれたのよ」
さすがに気になり、瀬里奈はそう呟く。
「いや……」
紘平は口の中でもごもごと呟き、はっきりとは答えなかった。
まあ……龍之介を巻き込んで秋葉と情報交換に励んだというのは、あまり喋りたくはないのだろう。
「あたしは、今のあんたでいいと思ってる。それじゃあ不満なの?」
同じ問いを繰り返すと、紘平は呻いた。
「……不満なのね?」
瀬里奈は、眉間に皺を寄せる。
「……試してみる?」
腰を前後に動かすと、紘平が呻いた。
「な……何を、だ?」
瀬里奈は、にっこり微笑んだ。
「出さない方法」
「ど、どんな?」
食いついた紘平の耳元に、瀬里奈は形のいい唇を寄せる。
ぼそぼそぼそ……
「…………!!」
方法を聞かされた紘平は、真っ青になった。
「そんなんできるかぁいっっっ!!」
「あ……秋葉?」
首をかしげる輝里は、可愛い。
形のいい眉を歪めて戸惑った表情を浮かべているのが、また可愛い。
さらにくっつくべきかそれとも突き放すべきか迷って狼狽しているのが、ますます可愛い。
……さて、秋葉の思考は何故に輝里が可愛いと繰り返しているのか。
察しのいい方はお気付きかとは思うが……ずばり、現実逃避中なのである。
自覚はあるがどうにも改善できないでいる恋愛沙汰に物凄くヘタレている性格の秋葉にとって、今の状況は現実逃避するには十分過ぎる理由があった。
胸の上には、体を支える二本の腕。
腹の上には、華奢な作りの腰。
両脇腹は、細っこい足が締め付けるように寄り添っている。