齋藤春宮の悩み 〜想い、花開く〜-10
自分より背丈が小さいのに迫力(インパクト)は数十倍もある巴からシャツの胸元を掴まれてがくがく揺さぶられ、脳ミソを延々とシェイクされていれば……それも仕方がなかろう。
「まさか龍ちゃん、美弥ちゃんのこんな格好に欲情するんじゃないでしょうね!?」
「そういう事を聞くんじゃないっ!!」
廊下に顔を覗かせた龍之介が、頬を赤くしながら叫んだ。
美弥のために眠気覚ましのコーヒーを淹れている最中に帰ってきた巴がそんな質問を叫んでいるのだから、頬が赤くなるのは致し方ない。
一般的な住宅より外壁の厚い高崎家だから外に声が漏れる心配はしなくてもいいだろうが……どう考えても、叫んでいい話題ではないだろう。
「あら、じゃあ欲情しないのね?」
目をぱちくりさせた巴の声に、龍之介は目を逸らした。
わざとだと思われたくないので黙っているが、美弥に渡した着替えのシャツは少しばかりくたびれていて布地が薄い。
巴が気付いているのかいないのか気付かないふりをしているのかは分からないが、ベージュピンクの乳首とそれを取り巻く乳輪が透けてしまっているのである。
今すぐにでも美弥を抱き、乳首を口に含んで舐め回したいと思うのだから……素肌の上にシャツ一枚を羽織った美弥へ欲情しているのは、事実だと言うしかない。
だがここでそれをあっさり認めるのは、いかがなものか。
かといって嘘をついてシラを切るのも躊躇われ、龍之介は視線を逸らして答えないのである。
「おっぱい透けさせて、エッチなんだから〜!」
……気付いていた。
「うえぇっ!?」
同時に美弥が、変な悲鳴を上げる。
こちらは、気付いていなかった。
我が胸を見下ろした美弥は、薄く透ける二つの突起を認める。
「やだ、龍之介っ……すけべっ!」
慌てて腕を組み、二人の視界から胸を隠しながら、美弥はそっぽを向いた。
「いや、あの……」
決してわざとではない事でそっぽを向かれ、龍之介は焦る。
「まぁ、龍ちゃんも男の子よねぇ……」
訳知り顔でうんうん頷く巴へ、龍之介は恨みがましい視線を向けた。
我が母ながら、憎たらしい。
じっとりした目で自分を見る息子へ、巴はニヤリと笑いかける。
「美弥ちゃん独占しようなんて甘い事、考えちゃ駄目よん」
ぷーっと頬を膨らませている美弥と美弥にしなだれかからんばかりの巴を見て、龍之介はため息をついた。
「はっ……ぅ……瀬、里奈……!」
自身の奥深くまで入り込んだ紘平が、苦痛にも似た声で呻く。
眉を歪めた表情からは、限界が近い事が見て取れた。
「いい、わ。紘平……」
それなりに感じている色っぽい声で、瀬里奈は囁く。
「イッて……」
汗ばんで上気した顔を、紘平は横に振った。
「駄目、だ……」
腰を振るのを止めて瀬里奈を抱き締め、呼吸を整える。
「もっと、気持ち良くなって欲しい……」
その言葉に、瀬里奈は驚く。
体を一つに蕩けさせれば自分の事で手一杯の紘平から聞かされる台詞とは、到底思えない。
嬉しい事は嬉しいが……一体誰から何を吹き込まれたのかと、瀬里奈は勘繰りたくなった。
しかし……ここでそれを口にすれば艶っぽい雰囲気などどこかにぶっ飛んでしまうから、質問はできない。
「仕方ないわね……」
瀬里奈は呟くと、結合を解くよう紘平に要求する。
紘平はおとなしく、瀬里奈の上からどいた。
「してあげる。イかないように、頑張って」
そそり立つそれを、瀬里奈は上から飲み込む。
艶姿を見ないよう、紘平は目をつぶった。