葵の決意-32
豹介の家は普通のマンションだ。極端に狭くもなく、広くもなく・・・
ごくごく普通のありふれた家だ。
豹介の父親は普通のサラリーマン、彼女の母はどこかの会社でパートとして働いている。
そして小学生の妹が一人いる。
家に着くと、家族みんなが食卓に集まって夕食が始まるのを待ちわびていた。
彼の家の普通さが葵には羨ましく、眩しかった。
「ほらここ座れよ、葵!俺の隣。飯食おうぜ〜!腹減ってるだろ?」
「え〜!私、あっ君の隣がいいっ!!」
「友美わがまま言わないの!お母さんの隣にしなさい。」
「やだっ!!」
「じゃあ、父さんの隣に来るか?」
「もっとやだぁっ!!!」
何気ない会話がまるでテレビドラマを見ているようだった。
こんなホームドラマみたいな光景がかつて自分の家にもあったかなど、
もう思い出す事さえ出来なかった。