葵の決意-25
そう言って豹介とその日は別れた。
毎日豹介は葵にメールを必ず送り続けてくれていた。
親友の心遣いが嬉しい反面、自分のやっていることがひどく醜く思えた。
知らない女の所に転がり込んでいる。
そう思うと豹介にこの女の存在を打ち明けられなかった。
この女とは何度かベッドを共にした。しかし葵の心の拒否反応なのか、
大事なところはいつも勃たなかった。
彼女にそれを気づかれないように、ありとあらゆる手で彼女だけを満足させていた。
しばらくすると、この女が自分に向ける目がまるで恋人を見るような
目になってきたことに気がついた。
出会ってたった14日間。
だんだんと彼女は葵について、他に女がいないのか探り始めるようになっていった。
メール相手が男友達でも彼女は嫉妬した。
彼女はよく、“私だけの葵君でいてね”そんな事を言っていた。
彼女は今までセックスをしたことがないと言っていたから、
恋人と呼べる存在もいないのだろう。
もし彼女が葵も彼女の事が好きで家に居候していると思ったら、
面倒なことになるな。この家にはこれ以上いられない。そう思った。
彼女がいつも通り出勤した後、電話の横に置いてあったメモに
“今までどうもありがとう。お世話になりました。もう家に帰ります。”
と書いて、自分の持ち物であった携帯だけを持ち、部屋を出た。