葵の決意-20
葵はカップを取って口を付けた。
「苦っ・・・」
「あ、ごめんごめん。私いつもブラックだから砂糖とミルク持ってくるね。」
そう言われた。なんだか葵は自分がすごく子どもだなと思った。
慣れないコーヒーを飲んで、知らない人が作ってくれた朝食を食べる。
なのに、葵の心はホッと落ち着いた。
「ねぇ君、名前は何て言うの?」
「・・・葵。」
「葵君か。家は何処?今頃ご家族が捜索願とか出してるんじゃない?
心配していると思うよ?」
「・・・・。」
葵は黙った。
「別にさ、言いたくないならいいけど。私これから仕事なの。だから・・・」
葵は食事がすんだら出てけと言われると思った。
「もしご家族が探しに来ないとか、行くところがないなら家にいてもいいよ。
出かけるなら、鍵は集合玄関のポストに入れておいてね。512号室だから。
お昼ご飯食べるなら、角曲がった所にスーパーあるから。
あ、お金置いておくね。1円も持ってないんでしょ?
あと今日は6時頃には帰れると思うから。」
思いがけずそう言われた。
「ありがとう。」
葵はそう呟いた。