葵の決意-13
そんな事を続けて季節は廻り、葵は中学二年生になった。
その頃にはすっかりと葵に色気が備わっていた。
あからさまに贔屓してくる女教師、一年生の間では葵の存在は目立っていたし、
三年生の女子生徒からも熱心に寄ってこられた。
しかし葵の心の中にあるのは久実の存在だけだった。
一度彼氏がいるのか聞いたが、はぐらかされそれ以来聞けずにいた。
家庭教師と生徒と言う関係を超えて、一緒に遊びに行ったりホテルに行ったりするが、
どうしても彼女の心の中だけはわからなかった。
しかしその関係が終わったのはすぐのことだった。
葵の父親が再婚し、新しい母親と弟が出来た。
別に新しい母親が彼に意地悪をしたり、弟が嫌なヤツではなかったが、
家の中で父親と新しい家族が団欒している中に葵は馴染めなかった。
いや、馴染む気もなかった。
自分の母親は父親のせいで死んだと思っている葵にとって、今でも父親の事は許せない。
家に葵の居場所はなかった。家にいたくない。一人の方が気楽だった。