知らされた過去-1
数日後、奈々子が勤務を終えて自宅の最寄り駅に着くと、
改札近くで彼女を待ち構えている人物がいた。
思いがけない待ち人に奈々子は思わず足を止めてしまった。
「こんばんは、葵の彼女さん。」
葵から元家庭教師と聞かされていた久実が奈々子を待っていたのだ。
奈々子はどう対応していいのか困惑しながら挨拶する。
「・・・こんばんは。」
「よかった〜会えて。夕方からずっと待っていたんですよ。
たぶんこの駅に来ると思って。私のカンが当たって良かった。」
「あの、何か私に御用ですか?」
「そんなに警戒しないで下さいよ〜、あなたに話しておきたいことがあって
ちょっと私に付き合ってもらえません?」
久実は上から目線で奈々子に軽々しく口を聞いてくる。
なんだかバカにされているみたいで嫌な感じ。
奈々子はそう直感したが、葵に関わる事なのかもしれないので、
素直に久実の言うとおりに駅ビルにあるカフェへと移動した。