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ゴヤ・シンドロームの男
【その他 官能小説】

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覚醒-3

 それにしても幻覚にしては細部まではっきり見えすぎる。

 俺は彼女の周りをぐるぐる廻り、時にはしゃがみ込んで見上げたりして観察した。

「へそのすぐ横に小さなホクロがある。胸の乳輪は十円玉くらいの大きさで色が薄い。

 小陰唇が大きくて前の部分が半分はみ出ている。そこにも大陰唇の左側に赤いホクロがある」

「わかったわ。どうやら見えるみたいね」 

「どういうことだ? 透視能力はつかないはずじゃなかったのか?」

「透視能力じゃないわ。だってへそにつけたピアスのことは言わなかったから。

 でも、肉体そのものの特徴はそのものずばりよ。

 あそこの赤いホクロというのは実際はは焦げ茶色だし、へその横のホクロも実際はちょっとだけ位置がずれているけれど、ほんのちょっとした誤差の範囲内ね」

「どうして俺には見えるんだ?」

「あなた、銭湯の番台に座っていたとか、何か人間の裸の情報に詳しくないかしら?」

「いや、そんなバイトをしたことないが、アダルトDVDなら死ぬほど見まくったけれど」

「きっとそれよ。それが服を着た女性と裸の女性を比較して、衣服で隠された肉体情報を推理する能力が潜在的に身についていたのだと思う。

 あなた服を着た女性を見て、心の中で裸にしてみたことはない?」

「そんなのはしょっちゅうだ。綺麗な女を見れば自動的に頭の中で裸にした姿を思い浮かべる。

 そればかりか、その女とセックスしている自分を思い浮かべて勃起することもある」

「なるほどね。聖書に心の中で姦淫する者は罪人であると言っているけど、あなたは宗教的な意味では完全に犯罪者ね。

 衣服を着た女性を見て想像の中で裸にして楽しむ心理をゴヤ・シンドロームというのよ。
 
 あなたはその重症患者だといえる。

 その為、死ぬほど沢山見てきたというアダルトDVDの情報から着衣の女性を見てもその裸体を忠実に再現できるイメージ力が身についてしまったといえるわ。

 それにしても、あなたの場合催眠によって潜在的に眠っていた能力が目覚めたといえる。

 普通なら考えられないんだけどね。

 着衣の状態から得る情報で全裸の身体の情報を得るなんてことはほぼ不可能といえるけど、脳の情報処理能力には天文学的な許容量があるから、あながち否定はできないわね。

 でもそのことをあまり人に言わないほうが良いわよ。」

 このは女史はそう言うと部屋から出て行った。

 さて俺はこの能力をどのように使ったら良いのか?  


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