7.帰宅-2
香代は四年ぶりに志賀家の玄関先に立っていた。
引き戸を開けると、軽やかな音がした。その手に感じる振動や音が香代の時間を一気に早戻しして、心ならずもここを出て行った日が、まるで昨日のように思われた。
檜の香りのする広いしんとした玄関に香代が足を踏み入れた時、二階からどたどたという足音とともに将太が駆け下りてきた。そして彼女の前に立った。
小さくただいま、と言った香代の目を無表情のまま見つめていた将太は、彼女が靴を脱ぐやいなや無言でその腕を掴み、二階への階段を急ぎ足で上った。香代は前のめりになって将太に引っ張られながら後をついて行った。
二階の和室は、将太が高校時代まで使っていた部屋だった。六畳の広さで、彼が当時使っていた机もタンスもそのまま置かれていた。少しかび臭い空気がひっそりと息を凝らすように満ちていた。
「座って、母ちゃん」
将太はゆっくりと低い声で言った。
香代は緊張した面持ちで畳の上に座った。
天井から下げられたペンダントタイプの蛍光灯の紐に手を掛けたが、将太はすぐに手を離して、そのまま香代の前に向き合って座った。
南向きの窓は埃をかぶった水色のカーテンで閉ざされ、部屋全体が青みがかった薄暮の海ような薄暗さだった。
「将太……」香代は今にも泣きそうな顔で逞しく成長した息子の顔を見つめた。
突然将太は母親の身体をきつく抱きしめた。その瞬間から香代の目から止めどなく涙が溢れ始めた。
香代も彼の背中を両手でぎゅっと抱いて震える声で叫んだ。「将太、将太! ごめんなさい、ごめんなさい、母さんを許して、将太!」
香代の両肩に手を置いて身を離した将太は香代を睨み付け、かすれた低い声で言った。
「許さない! 俺、許さないから!」
そして出し抜けに香代を畳の上に押し倒すと、その唇を自分の唇で塞ぎ、激しく吸い始めた。
驚いて目を見開いた香代は、それでも息子のその行為にどんどん身体を熱くしていった。
いつしか二人の舌が絡み合い、将太の手が香代の着衣越しにその乳房をさすった。そして将太は香代の身体中の匂いを執拗にくんくん嗅ぎながら乱暴にそのブラウスの襟に手を掛け、焦ったようにボタンを外していった。
身体を離して自分のシャツを脱いだ将太の怒りに満ちた顔を見て、香代は怯えたように言った。「将太、やめて……」
「許さない」
将太はまたそう叫んで、香代の着衣を次々に引きはがしていった。
香代は全裸にされて畳に横たわっていた。将太も穿いていたジーンズのハーフパンツを脱いで下着一枚の姿になると、タンスの一番下の引き出しを開け、丸まった黒いものを取り出した。
香代を見下ろしながら将太はそれをぶら下げて見せた。
それは黒いパンストだった。
「母ちゃん、これ、穿いて」
差し出されたそれを香代は躊躇いながらも手に取り、立ち上がって息子に言われるがままにそれを身につけた。
おもむろに将太は穿いていた下着を脱ぎ去った。彼の中心にあるものは天を指し、びくびくと脈動していた。
将太は香代を再び乱暴に押し倒して覆い被さり、また激しくキスをした。それから彼は香代の二つの乳房の先の硬くなった乳首を交互に吸った。ぎゅっと固く目をつぶり、額に汗を掻きながら一生懸命になって幼い頃に大きな安心感を与え続けてくれていたその乳房を彼は吸った。
香代は自らが腹を痛めた実の息子に身体を弄ばれながらも、沸き上がる熱い気持ちを抑えるのに限界を感じ始めていた。そして思わず両脚を広げた。
将太は口を離し、香代の穿いているストッキングのフロント部分を手で引き裂いた。そして露わになった母親の秘部に口をつけ、しきりに舌で舐め回した。クリトリスを捉え、重なった襞を唇で押し開きながら。
ああ、と激しく喘ぎ続ける香代の秘部からは、糸を引きながらとろとろした液が絶え間なくしたたり落ち、畳を濡らした。
「来て、将太」
香代は小さく口にしていた。
将太は無言のまま今にも泣き出しそうな顔で自分のペニスを握り、彼女の谷間に押し当て、ゆっくりと挿入させていった。
「あああーっ!」香代は身体を仰け反らせ、大きく喘ぎ声を上げた。「将太、将太!」
「母ちゃん!」将太は一声叫ぶと、激しく腰を動かし始めた。
香代は最愛の息子の名を何度も呼びながら、身体の中をめまぐるしく渦巻く沸騰した激流に身を委ねていた。
「イ、イく……出る、出るっ!」
将太の動きが一段と激しくなった。彼は汗だくで歯を食いしばり、腰の動きをさらに加速させた。
「将太! 来て、母さんの中に!」
将太は香代の身体に倒れ込んで、唇同士を重ねた。
そしてぐうっ、と喉元で呻いて腰の動きが止まり、将太の中にあった白いマグマが香代の体内に激しく放出され始めた。
「んんんんーっ!」
香代は将太と唇を重ね合ったまま、全身を痙攣させながら大きく呻いた。
はあはあと大きく胸を上下させ、二人は抱き合っていた。
やがて鼓動が落ち着くと、将太は香代を抱いたままごろりと横に回転して、彼女を自分の上に乗せさせた。
香代の目を間近で見つめながら、桜貝のように頬を染めて将太は照れくさそうに言った。
「叱ってよ、母ちゃん、俺を」
「え?」
「俺がちっちゃい頃、悪さした時にやってくれたようにさ」
香代は下になった息子を睨んで小さな声で言った。
「こら、将太。だめでしょ、こんなことしちゃ」
将太は切なそうに笑った。「全然怖くない。効果なしだよ」
香代も頬を震わせながら小さく笑った。
「許してあげるよ」
将太は優しい声で言って、香代の背中に腕を回した。
香代の目からまた涙がこぼれ、将太の頬に落ちた。
「もう泣かないでよ」
「将太だって」
香代はそう言って、自分の涙と一緒になって耳元を流れている将太の涙をそっと指で拭った。