〜 美術その3 〜-1
〜 2番の美術 ・ 彫刻 〜
絵、版画は併せて15枚程ありました。 週に1回のペースで一年かけて製作した作品数としては、15点でも十分すぎる数です。 しかし【B2番】先輩が並べた作品は、まだ半分以上残っていました。 石膏像、銅像、板彫り、塑像に粘土――二次元の絵画に対し、三次元の立体感を前面に出した作品群です。
指で乳首を摘まんでいる像、乳輪――先輩は『ちちまんこ』と呼んでいました――を拡げるように揉みこんでいる像、ふくよかな乳房や平坦なおっぱい。 素材も造形も様々に、牝の胸が林立しています。
先輩が説明する前に何となく見当はついてしまいました。 絵画のテーマが『チツマンコ』と指定され、版画のテーマは『ケツマンコ』と決められるなら、きっと他の製作でもテーマは与えられるんでしょう。 そして与えられるテーマとは、今回の立体造形においては『乳房』、学園的には『ぱいおつ』『おっぱい』或は『ミルクタンク』『ちちまんこ』に違いありません。
「教官が仰ってたのは〜絵画で観察力をつけて〜版画で表現技術を勉強して〜彫刻で理想の造形を追求するんだ〜って、いってましたね〜。 木彫りもしましたし〜石膏像も作りましたしぃ〜改めて思い出したら、こんなにたくさん、おっぱいばっかり造ったんですねぇ」
【B2番】先輩も、改めて作品が列をなす様子を前にして、眼をパチクリさせてました。
「凄い数だよ。 『つう』はさ、上手だからどんどん新しいタイプの像をつくってたから、なおさらだよね。 私なんて、完成した像がたったの3つよ? 教官ってば、気に入らないとニッコリ笑ってグシャッ、だもん。 作っても作っても壊されてばっかでさ……やんなっちゃった」
横から【B29番】先輩が口を挟みます。
「あらぁ〜あたしだって〜それなりに壊されてるんですよ〜」
「知ってるよ。 作るのが早い分、壊された数も完成させた数も、多分『つう』がトップだってことはね。 でもさぁ、私や『にに』だって、そこまでヘタじゃなかったと思うんだ。 教官が『理想の胸像』を作れっていうから、丁寧に細かく作ったつもりなわけ。 それなのにさぁ……ふぅ〜」
深くため息をつく【B29番】先輩。
「どこがダメかも教えてくれずに、チラッと見ただけで、ポイ、ポイ、ポーイだもんね。 『にに』みたいに、頑なにAカップばっかり作るのは論外としても、その点『つう』が作ったのは、それなりに丁寧に見て貰えてた。 羨ましいっていうのとはちょっと違うけど、何が違うのかわかんないし、いいなぁって思いながら見てたっけ」
「みなさん、根を詰めて作ってましたねぇ〜。 あたしは〜どっちかっていうと適当に造ってたから〜沢山作れたのかなあ、って思います〜。 少しくらい雑な所が〜教官の理想に近かったってことじゃないですかねぇ〜」
「結局、どういう像が『理想の胸像』なんだか、最後まで分かんなかったのが悔しいな。 どうせ碌な答えじゃなかったにしても、自分なりに納得したいじゃん」
「そうですねぇ〜。 答えは勿論〜ヒントも教えてくれませんでしたから〜。 あたしも毎回適当に作ってただけで〜深く考えて合格を貰った訳じゃないから〜未だにサッパリ分かりません〜」
美術授業の1つ、彫刻。 テーマは『理想の胸像』ということですが、どんな像を作れば正解かは教えてくれないらしいです。 正解については【B2番】先輩も本当によく分からないようで、【B29番】先輩と一緒に小首をかしげていました。
理想、というからには『綺麗な形のおっぱい』を造形すればいいんでしょうか? とはいえ綺麗な形だからといって、殿方と牝の接点がない現代では、綺麗だからどうしたって感じも否めません。
それとも母乳を出す、という点でいえば『大きいおっぱい』を作るのが正解な気もします。 もっともごく一部の牝にしか母乳を赤ちゃんに与える役目は回ってきませんし、回ってきたとしても授乳年齢を上回っていることの方が多いです。 どうせ人工母乳で対応するなら、おっぱいが大きかろうが小さかろうが、さしたる問題とは思えません。 大きさに理想を追求すること自体がナンセンスだと思います。
他にも『乳首の色、大きさ』『乳輪の色、大きさ』『肌の艶、張り』『垂れ具合』といった要素がおっぱいについて思いつきます。 でも、だったら理想はどうだって言われると……私にも皆目見当がつきませんでした。
隣にチラッと視線を送れば、22番さんも眉をひそめて俯いています。 きっと『理想の胸』が何なのか考えていて、先輩同様、これだっていう答えが見つからないんだと思います。
やがて考えるのを諦めたように、
「というわけで、私も『つう』も肝心な所は分かってないんだけど、一応『つう』が美術の成績トップなんだ。 あとは自分で『つう』の像を勉強して、それなりのイメージを作りなさい」
【B29番】先輩が肩を竦めました。
「作り方とか〜教官に言われたことなんかは〜覚えてる範囲で教えてあげます〜」
【B2番】先輩は、特にリアクションもなく、のんびりした様子です。 こうして美術の特訓の後半戦が幕を開けました。