〜 美術その2 〜-2
『一版多色版画』
版木に色付きの刷り紙を重ね、何度もインクを変えて塗ることで多色版画が刷りあがります。 輪郭線や影を彫り残すんじゃなくて、黒くするところを彫るのが単色版画との違いですね。 おけつを彫る場合は、中心の肛門とお尻以外の部分だけ掘ればいいため、手間自体は少なくなります。 後は肌を表す桃色と、桃色と灰色を混ぜた褐色を用意し、交互にインクを載せてばれんで刷れば出来上がり。 単色とは違った勢いがあって、私的には多色刷りの肛門の方が、見られたら恥ずかしいです……。
こちらも当然のように教官チェックがあって、肛門と肌がちゃんと画の通りの色かどうかが確かめられます。 肌はまだ大丈夫なんですが、問題は肛門で、皺の伸び具合によって色が変わってしまうそうです。 なので、チェック前には何度も鏡を跨いで『肛門の開き具合』『肛門の形』を練習しないと、まぐれで合格は貰えません。 自分の肛門を写した絵と見比べながら、鏡に肛門を写してああだこうだ息む姿……想像するだけでミジメになりますが……チェック当日はそんな風に落ち込む余裕すらないんでしょうね、きっと。
『コラグラフ版画』
彫刻刀に拘らず、プラスチックの板に様々な物体――棒やコイン、糸や布、アルミホイルや針金など――を貼って作った版画を『コラグラフ』といいます。 素材のツヤやザラザラした質感、マチエールで演出できる点が強みです。 素材の接着はニスで行い、わざとニスに厚みを持たせて凹凸を作ることも出来るそうです。
とはいえ私達は『学園』で美術を修めています。 目的は美しい作品を創造することの他に、卑しい身分の自覚を外してはいけないんです。 ということで、私たちがコラグラフに使ってもよい素材は『陰毛』のみ。 肛門周囲から蟻の門渡り、大陰唇から恥丘にかけて群生する叢です。 普段は剃毛の上で線香による毛根処理をしている私達ですが、特にコラグラフ前の一週間は、育毛剤を塗布の上で恥毛処理が免除されます。 恥毛が恥ずかしくて股を閉じても、縮れた毛は股間から茫々とはみだします。 学園入学当初はいわゆるパイパンを恥かしがっていたというのに、逆に未処理の陰毛を恥かしがるっていうのも、考えてみれば因果だなぁって思います。
いざ制作となったところで、一本一本丁寧に恥毛を抜いてゆきます。 毛抜きは使わせてもらえません。 爪や金具で摘まむと体毛のキューティクルが痛むため、指の腹で強く摘まんで『えいやっ』と引っこ抜きます。 比較的毛根が太くなっているため、陰毛をひっぱれば、ぷちぷちと音をたてて毛根ごと抜けるそうです。 痛みは……言うまでもありません。 激痛、とまではいかなくても、鼻の奥がツーンとなって涙が滲むくらいには痛いです。 慣れてくると気持ちよくなってくるそうですが、私には本当だとは思えません。
そうやって抜いた毛をプラスチック版に並べます。 いえ、並べるというよりは『植える』感じですね。 毛根の脂がプラスチックに張り付くため、一々ニスで固めなくても、意図したところに毛を置けます。 それじゃ恥毛で何を表すかですが、心象や波、風のような細い線が相応しい造形じゃありません。 表すのは、今まで通りに『肛門』でした。 恥毛を密集させてゴワゴワしたケツマンコを表現し、編み込むように並べた陰毛でもって肛門の厚みを表します。 お尻の輪郭や隆起は、恥毛の数に差をつけることで表現するようです。
恥毛の全てを抜いたあとの股間は、どこもかしこも赤く充血し、いくつかの毛穴には血が滲んでいます。 どの毛穴もポツポツと細かい孔があり、毛を毟ったあとの鳥皮のように脂肪が肌にへばりついています。 そんな股間を教官に見せて、改めて尻たぶを拡げて肛門を晒します。 すべての陰毛をつかって象った肛門の版画と、無毛の尻の谷間を照らし合わせるのがコリグラフのチェックです。 すっかり寒々とした股間は、毛を抜いた直後は特別敏感になっていて、空気に触れるだけでもヒリヒリします。 股間で風を感じながら肛門を視線にさらす感覚……すごくイヤですけど、頑張るしかありません。