屈辱-2
口を聞くのも嫌なティアラは、そのまま黙って王子の腕の中で耐えた。
しばらくすると、客間と思われる部屋へとたどり着く。
ティアラの不安をよそに、王子はふらつくこともなく彼女をベッドまで運んだ。
「わたくしは父上の元へ挨拶に行きますから、
しばらくあなたは休んでいなさい。
―――目が覚めたらまた可愛がってあげますからね。」
彼はニヤリと笑って、扉を閉めたが
鍵を閉める音は聞こえなかった。
コツコツコツ・・・と廊下を歩く足音が遠ざかる。
ティアラはフラフラと王子が出て行った扉に近づき、力を込めて戸を押してみた。
すると、いとも簡単に扉がギイと音をたてて開いた。
(あの王子、私が歩けないと思って油断しているのかな?
今のうちに逃げ道を探さなくちゃ!)
しかしティアラが一歩足を踏み出した時、目の前に男が立っていた。
武装した大きな男はティアラを見下ろしながら、彼女を咎める口調で言い放った。
「王子より申し付かっています。
部屋から出られると迷子になってしまいますから、
ここで王子が戻られるのをお待ちください。」
元気な時ならまだしも、走ることもままならない今のティアラは
大人しく部屋に戻るしかなかった。