太め女性議員の愛人-2
2.
「お疲れ様、すっかりお世話になりました。どこかで、一杯やりましょうよ」
聖子の言葉に、人目に立たないよう、谷本は地元を離れた浅草の行きつけのホテルのバーに誘った。
聖子はよく飲んだ。
体格がいいから飲めるのか、飲むから太るのか、酔った気配も無くグラスを空けた。
谷本はもともと飲める性質ではないので、程々にしていたが、それでも普段よりは捗ったようだ。
「ねえ、谷本さん、私のことどう思っているのよ」
「どうって、昔懐かしい、愛する友達だよ」
「ふーん、学生のころ、私が好きだったんじゃない?」
「今更そんなこと言ったて、しょうがないだろう」
「もう少し私が待っていたら、プロポーズしてくれた?」
「たぶんね」
「でもこんなに太ったの見たら、結婚しないでほっとしているんでしょう」
「いやあ、今みたいに太っていたとしても、橋田がプロポーズをしなかったら、僕がしていたと思うよ」
「ふーん、そうなんだ」
聖子の手が、谷本の手に被さった。
「あなたと結婚したらよかった」
「僕は今でも君が好きだから、気をつけないと誘惑するよ」
「誘惑してもいいわよ」
谷本が手を握ると、聖子が握り返してくる。
学生のときは、手が触れただけで心臓がドキドキしたもんだ。
「私、酔ってるの、酔ってるのよ、酔わせて聞きたいことがある〜じゃなくて、話して聞かせたいことがあるかな?」
酔っている割には、しっかりした口調で話し出した。
「正直言って、私は貴男の方が好きだった。
覚えている? 核持ち込み反対で横須賀のアメリカ海軍の軍港にデモに行った時のこと。安宿に泊り込みで。
夜になって皆が飲みに出かけて私が一人で留守をしていたら、なぜか橋田が一人残っていて、私のことを好きだ好きだって言いながら、力づくでやられちゃったのよ。
私がはっきり断らずにいたもんだから、プロポーズをしてOKしたからいいと思ってやったんだって、後になって言うのよ」
「ふ〜ん、それで?」
「だから、アレが貴男だったらよかったのになあと言うお話、終わり」
「あははあぁ〜、そう言うのを、後の祭りって言うんだよ」
幹夫は、トイレに行くといって席を離れた。
バーのカウンターの電話でフロントを呼び出して、部屋を取った。