ある生〜男の話〜-1
ある生が二人、その世界に投げられた。
あっちの世界の空気より、少し透き通って暖かい。
二人の男女のある生はある日バケツで知り合った。
男は女を愛してた。
恥ずかしがりやのその男、あっち行けよと照れ隠し。
二人が別れて十日たち男の強さは世界一。
だけど心は穴だらけ、それに詰め込むメシ達はもっぱらフナかカエルかニジマスぐらい。やっぱり男は愛してた。
あの世界と女の事を。いつか来るだろう独りの墓に、孤独には勝てぬし子孫も残せぬ。本当に俺は素直じゃないな、もしも俺が素直ならどんなに幸せだっただろう。
ドンナニシアワセダッタダロウ。
そんな気持ちが過ぎる頃、男は生涯を終えようとしていた。
最後に一度見たかった。
孤独の世界の俺の花。