愛おしい彼-5
ウォータースライダーへの階段がようやく高い所まで辿り着き、もうじき巨大滑り台を
体感出来る所まできて。
「流水プール、楽しかったね。」
「うん、ただ回るだけに何であんな楽しいんだろう、人って不思議。」
「でもさっき監視員に注意されてた子がいたよね。」
「ねぇー、死体ごっこだって、何が面白いんだろう。」
おちゃめな10人に一人の子供がそやりそうな事、本人は楽しいんでしょうけど現場を
管理する監視員からしたらいい迷惑な話。
「そういや君も子供の頃、それやったよね。」
「えっ?」
「監視員が注意したのに止めようとしなかったから見かねてその監視員が近くによったら
君ったらびくともしないで、最初は大した度胸があると思ったけど、そうじゃなく気絶していて、監視員が網で何故か君を救い上げ、言ってたよ「ひぃ!本物の水死体だ!」って
驚いたよ。」
「あ、あれは…。」
「風邪ひいてるのにどうしても行きたいっつって無理して行ってそのせいで。」
「そうだよっ!良いでしょ!昔の話何だから。」
「へっへーん!さっきの仕返しだよー。」
「んもぅー。」
アトラクションの退屈な待ち時間もこれならば埋められそう、独りで行ったらどれだけ寂しい事か。
「ふふ、でももしあの流水プールで皆して死体ごっこしたら、ぷっあはは駄目だ想像しただけでも、ふふふふふ、あっははははぁ!」
「……君って時々天然だよね。」
そうこう喋っているうちに私たちの番が来て。
「さっ、行こう!」
「うん。」
人前なのか、さっきとは打って変わって彼氏らしくリードしようと手を差し伸べる。
従業員も頼もしい…みたいな顔で見て、背中思いっきり押してやろうかな…。