〈狂育〉-13
『亜季ちゃん、コレって何だろう?ホノカちゃんとナギサちゃんの鼻の所がコリコリするよ?』
「あッ!?やあッ!きゃッ…ん!」
ちょうどキャラクターの鼻の部分に、ポチンとした突起が確認出来た。
それは明らかに亜季の乳首であり、哀しくも悪戯によって勃起に至ったという恥辱の反応が現れてしまっていた。
『あれ〜?これってブラの飾りじゃないねえ?そうか、カップの中に“何か”が入ってるんだなあ?』
「んあッ!やめ…ッ!や、約束と違……ッ!」
悪戯に耐えきれなくなった亜季は“お兄ちゃん”の言いつけを破り、腕を振り払うと勢い余ってベッドに倒れてしまった。
手足を縮めて俯せた姿勢はまるで亀であり、それは身を守るのが精一杯な亜季の心情の表れでもあった。
『……約束と違うって?お兄ちゃんは買ってあげた下着の肌触りを確かめてるだけだよ?』
踞って丸まっている背中は、桜色の中に斑に鮮やかな赤を点していた。
あのマンゴージュースに混ぜておいたアルコールが、覿面(てきめん)に効いているようだ。
安物の焼酎は味も香りも弱く、甘ったるいマンゴーの果汁に掻き消されてしまっていた。
つまり長髪男はまだ小学生の亜季に、あろうことかマンゴーサワーを飲ませたのだ。
『……お兄ちゃんは亜季ちゃんを気遣ってるんだよ?ガサガサの布地だったら着け心地が悪いだろ?だから肌触りを確かめてあげてるんだ……ほら、恥ずかしがらずにお尻を上げて?でないと何時までも帰れないよ?』
「ひぎ…んうッ!うぅ!」
その口調がいくら優しくても、亜季にとっては命令と変わらない。
『お家に帰してあげる』という甘言を楯に、その“気遣い”は亜季を辱しめようとエスカレートしていく。
亜季は嗚咽に呼吸を引き攣らせながらも、言われるがままにフラフラと尻を持ち上げ、屈辱的な体位を自ら作った。
「グズッ…お、お姉ちゃん助けてよぉ…ヒック!こんなの恥ずかしいよぉ……」
『なんで「お姉ちゃん助けて」なんだよ……「お兄ちゃん大好き」って言ったのは嘘だったのかい?ホントはお兄ちゃんが嫌いなのかい?……フン!今度お姉ちゃんとかパパとか言ったら許さないからな』
元より他人より優位に立ちたい男である。
酒を飲ませて思考力を弱らせ、その上で嘘を並べて騙し、そして逆らえない状況になるよう亜季を追い込み、全てを思い通りに操作してやろうという欲望は、ついにその牙を剥き出しにして隠さなくなった。