変容-5
エピローグ
男は自室でゆったりとソファーに座り酒杯を傾けていた。
じゅぶ…ぷっ…じゅっ…
その足下には全裸の女が一人、男の陰茎をくわえ、卑猥な水音を立てながら頭を上下させている。
目の前のテーブルには…つまみだろうか、数きれの焼き肉が盛られた小皿と徳利、その横に高さ10p程の小瓶が一つ置かれている。
男は大きめの白磁の杯につがれた酒を一気に飲み干すと、それをテーブルに置き、空いた手で小瓶を掴んだ。
ビンの中は透明な液体で満たされ、フタの裏に付いた鉤形フックがビンの中央まで垂れ下がっている。その尖端には銀色に光るリングが二つ…さらに、それぞれのリングから2p程の太めのサラミのようなものがぶら下がっていた。
男はしばしそれを眺めると、ふと一人ごちた。
「…ずいぶん保ったな。」
誰に聞かせるわけでないその独白からは、多少の後悔が感じられたが、僅かな未練を拭い去るように男はその小瓶をテーブルに戻した。
男は、己の股間で口唇奉仕する女には全く意識を向けていない。
その所作と表情だけを見ていると、まるで女が存在しないかのように普通に振る舞っており、全裸でのフェラチオがいかに普段の生活において当たり前になっているかが推し量れた。
皿の上の焼き肉を指で摘む。
硬めに焼かれたその肉はほんのり温かく、表面には塩コショウが振ってある。
男は指先で肉の感触を確かめた後、それを口に運んだ。
何かを味わうようにゆっくりと咀嚼する。
「悪くない。」
口の中に広がる肉の味は、多少癖があるものの脂がのっており、牛や豚とは異なる旨さがあった。
男はそこで初めて己の股間で蠢く女に意識を向け、その肉汁で汚れた指先を全裸の女に差し出した。
ぺちゃ…ちゅ…
陰茎から口を離した女は、躊躇いなくその指を舐めしゃぶる。
男は肉汁の代わりに女の唾液まみれになった指を引く抜くと、再び陰茎を口にくわえようとした女の髪を掴んで仰向かせた。軽く身を屈め、半開きになった女の口に自らの口を重ねる。
「ん…」
自らの口腔内で咀嚼され唾液と混じり合った肉を女の口内に運び入れると、女は嬉しそうにその肉を受け入れた。
それが『姉の肉片』だと知らずに。
男の陰茎を舐めしゃぶる女の名前は望。
半年程前に廃棄した『生ゴミ』…元人妻音楽教師の肉便器…恵の3歳年下の妹だ。
恵に似てスレンダーではあるものの、恵より少し背が高く、胸も尻も大きくはないがそれなりにある。恵に似た二重まぶたに黒目がちな大きな瞳、顔の輪郭は卵形で、可愛さよりも美しさが勝る、はっきりとした一級品の美人だった。
そう、男は恵を誘拐した後、その妹をも毒牙にかけていたのだった。
人妻ではあるものの、教師ではなく、姉程の知性と強固な貞操観念を持ち合わせていなかった望は、『心を食べる』男の獲物としては物足りなかったが、その身体と顔が特上であった事と、何より恵の妹である事が男の食指を動かした。