〜 情報その6 〜-2
「あのっ、よければ今教えてくれた昔のネットにアクセスしてみたいんですけど、ダメですか?」
「今から?」
明らかに気怠そうな【B29番】先輩にも、
「少しの間で構いません! ぜひ!」
怯まずに頭を下げる22番さん。 本音では私も切り上げたい側なので、敢えて同調しなくてもいいんですけど、ぺこり、何となく流れで22番さんに併せて頭を下げてしまいました。
「……もうすぐ消灯だし、あんまり長くは付き合わないからね。 それにページ閲覧履歴は残るから、変なページ、例えば男性アイドルとか、ショタ、腐女子的なのは見るわけにいかないよ。 大丈夫と思ったページでも、寮監様に難癖つけられちゃったらどうしようもないし、あんまりおススメしないんだけど……それでも見る?」
「はいっ!」
「ふう……熱心なのは悪いことじゃないかぁ……まあいいや」
不承不承といった体で、先輩がパソコンを操作します。
「どんなページが見たいか、キーワードを言いなさい。 大丈夫そうなら、それでヒットするページを見せてあげる」
「はい! ありがとうございます、失礼します!」
いつの間にか【B29番】先輩の隣に椅子を引っ張ってきて、ちょこんと座る22番さん。 どんな単語で検索するのか興味があり、私は2人の背中越しにモニターを覗きました。
……。
22番さんが頼んだ単語は『女性』『宗教』『差別』『蔑視』。 私は勿論のこと、【B29番】先輩も、どうしてこんな単語を検索したがるのか分からないようで、何度も首を傾げています。
22番さんが選んだページに乗っていた情報は、概略次のようなものでした。
『【割礼】 スンナの割礼、クリトリドトミーというような、クリトリスの一部に切れ目を入れたり、除去するタイプが主流。 傍流には『陰唇を切り落として糸で縫い付け、尿道と月経用の小さい孔を人為的につくる』ような外科的技量を要する施術がある。 一部では『陰唇を削る』『肉芽を抜く』『陰部に腐食性の薬液を塗る』『肉芽と陰唇を焼いて周囲の神経も抹消する』ような行為が、成人儀式として義務づけられている。 特定宗教で奨励。 割礼の由来は、女性が快楽を知ると手が付けられない、知能が劣化する、淫蕩に耽る、といった事例を防ぐため。 女らしさを増す副作用がある(byフロイト)、といわれている』
『【名誉殺人】 処女性を失った女性は、自分の価値を貶めたため鞭打ちに処せられる。 家庭内から強姦による処女性喪失者が出た場合、家族は自分達の名誉を守るため、処女を失ったものを殺すことが奨励される。 女性が襲われる理由は自分が無意識、有意識的に男性を誘惑したためなので、男性側に罪はない』
『【石打ち刑】 婚前に性交渉を持つことは当然として、婚前に男性と手を繋いだり、婚前に男性と二人きりになることなどは、すべて男性を誘惑する淫乱さの発露と見做す。 或は婚後に主人以外の男性と性交渉をもつ、主人の許可なく2人で過ごすなどした場合、主人に対する重度の裏切りに該当する。 こういった咎をもった女性は下半身を地面に埋め、上半身に向けてレンガ大の石をぶつけて罪を償わせる。 万が一罪を償う途中で下半身が土から抜け、石を投げる輪から逃げ出すことができれば、神が赦したと判断され、刑は有耶無耶になる』