取引-5
「ところで、あなたの言う探し物とはこれの事ですか?」
彼はそう言うと、ティアラの目の前に彼女のペンダントをちらつかせた。
左右に揺れるペガサスが彼女の目に入る。
「これ・・・私のです!!!」
「――そう思ってあなたを探していたんですよ。
落ちていましたよ、舞踏会の会場に。
あなた、あわてて広間から出て行ってしまいましたからね、
その時にでも落としたのでしょう。」
王子はニヤニヤと妖しい笑みを浮かべながら言った。
「ありがとうございます!わざわざ拾って頂いて・・・」
しかしティアラが手を伸ばすと、紐に繋がれているペガサスが宙を舞い、
王子の掌の中へと消えてしまった。
彼はそのままぎゅうっと拳を握りしめる。
「あなたは無償で返してもらえるとお思いですか?」
「えっ?」
「あなたは隣国の王子に、拾いものをさせたのです。
それからわざわざあなたを探しに、
夜更けにこんな人気のない庭園まで足を運ばせたのですよ。
何かあなたから褒美をいただかなくてはなりませんね。」
高圧的な態度で笑む王子の顔を見た瞬間、
ティアラは身の危険を感じて両腕で自分の身体を抱きしめた。