取引-12
「そうそう、ティエラ様。あなたの娘のティアラ、
とても可愛らしいですね。
昨日のダンスも素晴らしかったですよ。」
「ありがとうございます。
まだ王宮暮らしに慣れていないのですが、あの子なりに努力しています。」
「こちらへ来られる前は、どこかの小さな村に住んでいたとか・・・。」
ティエラは苦笑いでほほ笑む。
「おっと、失礼。あなたの過去を責めている訳ではありませんよ。
しかし本来、あなたはわたくしの父の元へ嫁ぐはずでしたから、
こうして今、わたくしとあなたが出会えたのも何かの縁でしょう。」
「はい、そうですね・・・。」
「もしあなたが予定通り、わたくしの父の城にいれば、
今頃わたくしはこの世に存在していませんし、ティアラもいないのですね。
運命とは、どこでどう変わるのか・・・不思議なものですね。」
「ええ・・・。」
「ああ、しんみりさせてしまいましたね。」
王子はそう言った後、ティエラの顔をじっと見つめてから再び口を開いた。