取引-11
――次の日の朝、さっそくティエラは隣国の王子が滞在している客間へと赴いた。
王子はティエラの姿を見た瞬間、何の話をしに来たのかすぐに察し、
すぐに彼女を部屋に招いた。
「これは、これはティエラ様。どうされましたか?」
「朝早くの訪問、大変失礼と存じ上げているのですが・・・
少しお時間よろしいですか?ドミニク王子。」
「ええ、構いませんよ。お茶でもいかがですか?」
「いえ、長居は致しませんので、結構です。」
「そうですか、それは残念ですね。色々と昔話を聞きたかったのですがね・・・。」
「あのさっそく本題なのですが、昨日拾って頂いた象牙のペンダント、
あれは私のものなのです。」
「ああ、これですね。」
そう言って王子は胸のポケットから大事そうにペンダントを取り出す。
「はい、間違いありません。あの・・それは私の思い出が詰まっているものなので、
今、返していただけないでしょうか?」
ティエラは王子から目線を逸らさずに頼む。
「ええ、構いませんよ。」
身構えるティエラに、王子はあっさりとペンダントを返してくれた。
拍子抜けしたティエラは、昨日どうしてティアラがてこずっていたのかわからない。
という表情をした。
この王子は自分と同じ年頃の子をからかうのが好きなのかしら?
そんな風に思った。