舞踏会-9
そんな事を考えている間に、角笛の音と共に王子が到着し、馬車から姿を現す。
華やかな馬車から降りてきたのは、
細身で風が吹けばすぐにも飛んで行ってしまいそうな、線の細い王子だった。
しかしその表情は威厳に満ち溢れていた。
年頃はティアラより2,3歳上といったくらいだろうか。
馬車から降りるなり王子は待ち受けていた人々を見渡す。
王子はゆっくりと視線を右から左へと移し、
噂の美少女が誰であるかを探しているようだった。
その視線がティアラで止まったかと思うとすぐに王子は、
満面の笑みで国王と王妃の方を向き、挨拶を交わした。
「お久しぶりです、レオン王、ティナ王妃。
このたびは、わたくしの為に舞踏会を開いてくださってありがとうございます。
無理を言って申し訳ない。」
「よくぞ参られました、ドミニク王子。国王陛下はお元気でいらっしゃいますか?」
「ええ、父上も母上も相変わらずですよ。ぜひまた我が国へも足をお運びください。」
一通りの形式ばった挨拶を済ませると、
一行はさっそく舞踏会が行われる会場へと移動した。
ティアラはすでに気後れしていた。
王宮に住んでふた月を迎えたが、未だに自分の生活の変化についていけないでいた。
彼女は早く舞踏会が終わって、王子が帰ってくれることを心の中で願っていた。