舞踏会-2
1、2、3・・・1、2・・・
耳を澄ますと、広い宮殿のどこからか手拍子と共に、掛け声が響いてくる。
「ほら、また間違った!」
「下を見ないで、顔を上げて!」
舞踏会が行われるホールからほど遠い、
あるフロアでダンスの練習をしている母と娘がいる。
母が熱心に子にダンスを教えているのだ。
張り切る母とは対照的に少女はげんなりした表情で、床にしゃがみこんでしまう。
「――もう無理だよ〜・・・、ちょっと休憩しない?」
「何言っているの?!もう時間がないのよ。さあ、口を動かす暇があったら、
練習、練習!」
「お願い!もう無理だってば・・・。だって私ダンスなんて踊った事ないんだから!
どうしてもやらないとダメなの?私見てるだけでいいんだってば。」