〜 情報その2 〜-3
画面いっぱいに別窓が広がります。 ホームページのデザイン自体はシンプルで、トップにはでかでかと『全てを覆う虚構の塊:服飾』とあります。 『多様な服飾・旧世紀』という項目をクリックすると、裸の女性と対比するかのように、様々な衣装を身につけた女性が登場しました。 それぞれの衣装について、全裸に劣る理由が列挙してあって、例えばこんな具合です。
『韓服、チマチョゴリ。 乳房部分の中心を繰り抜き、出産した女性がいつでも服を肌蹴ることなく母乳を与えられるよう工夫した衣装。 乳児への授乳を最優先し、乳房を露出することによる羞恥と尊厳を無視した点は望ましい。 一方、そもそも授乳を勘案するなら、乳首だけでなく肌触りを考慮して乳房全体を露出するべき。 もっと言うと肌の感触を重視するなら、常に上半身を全裸にする方が望ましい。 中途半端に乳児を優先するに留まっており、全裸には劣る』
『羅馬服、トーガ(古代ローマの衣装)。 一枚布を身体に巻きつけて防寒と清潔な着衣を両立する。 楕円系の布にきめ細かく襞(ひだ)をつくり、アイロンで固めたものを身体に巻いて衣装とした。 身分と密接にかかわっており、色彩、装飾、刺繍、純白などが着る人の身分によって細かく規定されていた。 例えば娼婦用のトーガ、姦通牝用のトーガがある。 一目で牝の不埒な行状を理解できるようにした工夫はさることながら、基本的に全ての牝は品性劣悪、性欲旺盛、自慰慣行なため、殊更に衣服で女性のオゲレツさを強調する必要があるかどうかには、再考すべき点がある』
『澳服、アオザイ。 高温多湿な環境に合わせ、極限まで薄い布で仕立てた貫頭衣。 縫製に余裕がないため体の線を強調し、いわゆるヒップラインや腰の縊れ、乳房の大きさを強調する仕様になっている。 布が薄くすることで肌や突起物が服を通して露出するため、服の装飾と併せて恥部を強調することができる。 太ってしまうと身体が入らなくなる効果により、体形が崩れることを未然に防ぐ効果もある。 もっとも肌を露出させるためであれば全裸に勝る装飾はない。 体形の乱れを外部に晒すことで自制を促す点に於いても、全裸で常に衆目の監視を受ける方が理に適っているといえよう』
『印服、サリー。 細長い布からなっており、様々なスタイルで身体に巻きつけて衣装とする。 内股の間を何度も通しながら、その都度股間で締めて体に密着させ、ボディラインと勃起した乳首を強調させる。 股を潜らせながら腰、胸を巻いたあとは残りを肩の上に回して垂らし、縛られた家畜としての姿を演出する。 もっとも真に家畜であれば、そもそも衣服を纏う必要がないわけで、全裸を基準に縄あるいはゴムで緊縛する方が真摯と思われる』
『波斯服、チャードル。 全身を覆う丈の布で、半円型をしている。 前の切れ込みを拡げ、頭からかぶって袂を締めて身につける。 顔を両目の部分から下まで白いヴェールで覆うことで、淫らな妄想に耽る表情や発情した頬を隠す。 ヴェールを外すことは全裸より恥ずかしいとされていて、卑しい牝の劣情で殿方の意識を邪魔させない点に留意している。 といっても、全裸が敢えて卑しい自分を晒して赦しを求める身なりである点を勘案すれば、なまじ隠そうとするチャードルが不誠実という誹りは免れない』
【B29番】先輩のHPは、様々な衣装の写真や、自分自身を写真と合成した映像、着付のアニメーション、伝統的音楽にのって民族衣装をきた生徒が動く動画など、様々な工夫がありました。 そして、それらすべてに対応するように、全裸の学園生徒の映像が配置されています。 常に股間を左右の手で拡げ、恥部を丸出しにして歩く裸の女性を称える文章と演出。 民族衣装を貶しあげつらう構成。 すべての項目末尾に付加される『牝の装いとして、全裸の方が優れている』の文字。 学園の情報教育が意図するところがだんだん私にも分かってきました。
『全裸の現状を肯定する結論を自分で設定し、強化する意図を込めてHPを作る』――現在を肯定するために、過去の全てを否定する――つまり、そういうことなんですね。 私たちに課された作業がもつ意味って。
教官が日ごろから口にすることと合致します。 牝のオゲレツさの自覚して、私たちは生きていかなくちゃいけません。 そして、自分たちのオゲレツさを、きちんと他人に理解できる形で表現し続けなくてはいけないです。 HPを作る過程で、否が応にも意識しなくちゃいけない、私たちの姿。 端的にいえば、一日中裸で過ごし、機会を見つけては自慰に耽り、折に触れて床に這いつくばっている姿です。 それを肯定するんだから、牝が服を身につけているなんてとんでもないわけです。 後はどうやって理屈を構成するか、どのように表現するかに知恵を搾ることになるんだろうな、って思いました。
「私のだけ見せるってさ、なんかヤな感じじゃない? ににのも見せてあげなよ」
「どうせだから、全員のを見せちゃえばいいです。 個人的にも見てみたいし」
「うーわ、悪趣味。 私的には黒歴史なんだけど」
「ににだってそうです。 でも、開き直った方が色々楽じゃないです?」
「まあねぇ。 これくらいで落ち込んでたら、Bグループなんてやってられないよね」
「そーゆーことです」
ポチポチ、次々に別窓が開きます。 【B22番】先輩が見せてくれたHPは『料理の歴史』『洗濯の歴史』『メイドの歴史』『スポーツの歴史』――どれもが例外なく肌色のオンパレードでした。