本気の恋-3
この前の騒動以来二度目の帰郷、でも今回は穏やかにゆっくり出来そうだ。
「佐伯くーんっ♪」
「うおわっ!」
俺の姿を見つけるなり、行き成り抱き着く風馬。
「やめろって、こんなのもし巴が見たらまたBLだって噴き出すだろ。」
「えへへー。」
子供のように無邪気な顔で笑う、やれやれ。
「向こうではどう?大変じゃない?」
「大丈夫だ、そりゃー帰ってくるの遅いし家で独りは多いけど。」
「もし良かったら僕に電話でもしてよ、きっと寂しいの紛れるよ。」
「そうかもな、ありがとう心配してくれて。」
本当優しい奴だな、柊さんが羨ましい…ってもう関係ないか元カノだし、元カノ…。
「で?今日はどうしてここに?」
「なんでってお前に会いたかったからだよ。」
「うわぁー嬉しいなぁー、僕も同じ事考えてたよ。」
「ふふ、まぁ他にも理由はあるけどな。」
「えっ?」
それから俺たちはバスを使いあの場所へ。
「何?この小さい家。」
懐かしさを感じる、地味な家、そう俺とそして親父の居た自宅だ。
「俺の家だよ、今も親父は住んでるとは思うが…。」
「っ!ごめん…小さいだなんて言って。」
「良いよ、本当の事だし。」
そして俺はその古めかしい家に鍵を構え近寄る、こんな家でも一応鍵は持っていった。
中に入ると部屋は思ったよりもきれいになっている、どーせビールの空き缶でも転がって
いるのかと思ったけど。
「実の父親なのに親らしい事何もしないで、お酒ばっか飲んでるんだもんね、酷い親だよね、どうして佐伯君がこんな目に…。」
「風馬…。」
まるで自分の事のようにメソメソと泣きじゃくる。
「そんな泣くなよ。」
「だって、ぐずっひっく…。」
「ほらティッシュ、あーあ鼻水まで出て。」
親の如くポッケからティッシュを取り出す、でも彼は受け取り素振りがないので、涙を
拭いてあげる事に。
「はいチーンして!」
「ふんぬぅーーーーーっ!」
何だこの絵図は…。
「落ち着いたか?」
「うん、ありがと…。」
いちいち可愛い奴だな。
部屋に親父の姿はない、でも散らかってない事からそれなりに。
「君が居なくなってお父さん、気にならなかったのかな…。」
「まぁ普通に気づくだろうな、でも探そうとはしなかったんだろう、アイツなりに罪悪感
を感じて。」
「自分に息子を探す資格何てないと?」
「そういうこったな。」
でも一安心した、元気そうで。
「良かったね、それでもまともに生活してるみたいで。」
「あぁ、本当に良かった。」
安堵の表情を浮かべ、それを見て風馬も笑顔になる。
「さてっ!ホッとした所で何処行くっ!?喫茶店?カラオケ?それともラブホテル?」
蓮とコイツ、バカさ加減が良い勝負だな。
「俺、また恋してもいいのだろうか?」
「え?」
「そもそもこんな俺にそんな権利、あるんだろうか…付き合っては振ってを繰り返す俺何かが…。」
「佐伯、君。」
俺は早乙女先輩が好きだ、けれども…。
「良いんじゃないかな、付き合っても。」
「でもよう!」
「人生何時だってこれからだよ、お互い両想いならそれで良いんじゃん!」
「両想い…。」
薄々そんな感じはしていたけれど、いざいわれてみると…。
「それで佐伯君は今よりもっと幸せになれば僕もとっても嬉しいなっ!」
「風馬…。」
人よりも質素な家庭ではあったけど、柊さんに蓮に巴、そして風馬、俺は皆から大事に
思われてるんだな。
「ありがとうっ風馬っ!」
「佐伯、君。」
「俺、頑張ってみるっ!」
ぎゅと包み込むように友を抱きしめる。