佐藤クンの親友-2
クラクラと回転する視界の中、ほほえんで事の成り行きを見守っている佐藤を見つけた。
が、もう田中はボクを解放してくれない。
「ぼけー、死んでまえこらー!!」
体中が殴打されている感覚がする。
意識がとだ…え………る。
……………
「大丈夫ですか中村クン?あのとき先生が来なかったら少々危なかったですね。あとあの事で田中クンは停学処分ですよ。ボクの親友をこんなにしたんです、ボクとしては退学でもよかったと思いますよ」
目覚めてすぐ、視界にはもう見慣れた保健室の白い天井。
耳には二度と聞きたくないと思っていた声が響く。
「よかったな、全部お前の予定通りか。たかが自分の少し気に食わない人間を消すためにボクを使ったか。何が親友だ、阿呆か?うざいから消えてくれないか?本格的にボクは死ぬかもしれないと思ったよ、しかも他殺じゃなく自殺の可能性もでてきた」
自分の鬱憤を必死に足りているかどうか分からない自分の言語能力で表現する。
でも返事は大体想像がつく。
「なんの事ですか?ボクはずっと中村クンの親友ですよ、中村クンはそうは思ってくれないんですか?たとえ中村クンがそう思ってくれなくてもボクはそう思い続けます。だから死ぬなんて言わないで下さい。ボクの大事な親友がそんな事を言うなんて……とても耐えられやしない!!」
手を握りしめ、涙を浮かべ熱演する佐藤。
きっとあいつは親友の意味を取り違っているに違いない。
それにしても目尻に涙をためるなんていうのは凄い。だからボクはこう言う。
「佐藤クン、キミは凄いよ。そんな名演技、俳優になりなよ。きっと有名になれるよ。そして有名になって仕事に追われ、そして二度とボクの元に帰ってこないでくれ」
精一杯の笑みを浮かべて言う。
「ありがとう中村クン!!一緒に芸能界に行こう!!そして二人で有名になろう!!」
都合の悪い場所は無視して感動する佐藤を見てボクの疲弊しきった精神の糸は切れた。
そしてまた意識はブラックアウトしていく。
「中村クン!?中村クーン!!―――ダメだー!!」
最後に耳に余韻を残して響いたのは阿呆のボクの名前を呼ぶ叫びだった。