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おはよう!
【純愛 恋愛小説】

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おはよう!-2



「・・・38.5℃」

次の日。時間にすると、朝10時。
和音は体温計の表示を見て、その℃数を呟く。
体温計のもっと奥、その目線の先にはベッドで寝込んでいる波音の姿。
和音は、ふう、と小さく息を吐いた。

「・・か、ずね姉・・ごめん、ね」
「いいよ、波音のせいじゃない。もう、寝てていいよ」

そう言いながら、布団を被せてその上をポンポンと優しく叩いた。
その心地よいリズムと熱っぽさから波音はすぐに眠りへと落ちた。
波音が眠ったことを確認した和音はそっと波音の部屋を出て、自分のケータイを取り出す。

昨日、和音が作ったけんちん汁とご飯を食べてから少しして、波音が体調不良を訴えたのだ。元々病弱の彼女は、和音が帰ってくるまで寒々しい廊下で待っていたことで身体に無理をさせてしまった。
感づいた和音は早々に波音を寝かせたのだが、やはり朝起きても体調不良は収まらず、逆に熱が高くなってしまった。

優羽に、春休み最後だった今日の練習は休むことをメールで伝え、リビングに戻る。
波音のためのお粥を作ろうとキッチンに立つ。

「練習出られないこと、奏多に言ったほうがいいかな・・」

誰に答えを求めるわけでもなく、ぼそりと呟く。
奏多にメールを送ろうとケータイを取り出しかけるが、すぐに思いとどまる。

「別に・・わざわざ言う必要もないよね、変なこと言われても嫌だし。」

そう弁解して、昨日も使用した小鍋を取り出してお粥を作り始める。
お昼頃に目を覚ました波音に、温め直した卵粥をお茶碗によそって渡す。
少し睡眠を取ったおかげで体調不良の悪化や、熱の上昇もなく、また食欲も取り戻したようで、波音の分と用意したお粥がキッチリなくなるまで完食してくれた。
ちゃんとデザートのみかんゼリーも食べていることで、和音は少しホッとした。
常備薬と水を渡して部屋を出ると、キッチンへ戻って後片付けをする。流しでお皿を洗ってから、もう一度コップに水を入れて部屋に入ると、既に波音は薬を飲み終えて眠っていた。
そばに置いておいた体温計で熱を図ろうと思ったが、お腹いっぱい食べて満足したのか熟睡しているので、後にしようと和音はもう一度部屋を出た。

自分のお昼ご飯を準備しつつ、優羽からの「練習の日程表を届けるから和音の家に寄る」という内容の返事をチェックしていたとき、昨日から家に居ない母に念のため連絡をした方が良いことを思い出す。
電話画面を表示してから、電話を繋げる前にすぐ電話画面を閉じてメール画面へと切り替える。

「・・どうせ、電話しても出ないし。」

ぼそっと、低い声で呟く。
機械になったような慣れた動作で、簡潔な文章でメール文を作って送信する。
待受画面に戻してからケータイを閉じると、ソファーへと投げ捨てた。
今の母にメールを送っても、返事が返ってこないことが分かりきっていた。
和音は静かに、自分用に用意したご飯を一人で食べた。




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