下弦の月は、深夜0時にのぼりはじめる-2
「あのコらのユカタ、みんな私が着付けたんやで。」
「え?」
「私、お祖母ちゃんとかママとかが、着物を着るん手伝っとるから、ユカタの着付け出来るねん。それが何でかクチコミでみんなに広がって……今日は昼前から、知らんコまで20人くらいにユカタ着せたわ。」
「それはそれは、お疲れさまでした。」
僕がカズミの前に立って、礼をした時だった。
パン、パパパパンッ、パンパンパンッ!
むこうの空に光が走った。まわりにいた人たちがゾロゾロと動きはじめた。
「花火大会が始まるんやな。」
と僕がつぶやいて、ふとカズミを見ると、カズミはななめ後ろを見ている。
「この音がイヤやから、来たくなかったんやわ…」
僕はカズミの一言に戸惑いながら、花火の光に照らされるカズミの胸に見いってた。まわりに人がいないのをいいことに、そっとそこに手をのばして見ると、
パパパンッ! ドーン! ヒュ━━… ドドーン!
いきなりデカイのがあがった。
「アカン!」
カズミが僕の腕にしがみついてきた。僕の腕にカズミの胸の柔らかさが直接伝わってきた。僕は
(花火の音がイヤなのに、なんで来たんやろ?)
と思いながら、カズミを引きよせて胸の感触を味わっていた。
パパパンッ!パパパンッ!パパパパパパパパパパパパ…
ドドーンッ!
まるで空爆みたいな轟音があたりに響いた。そのあと、あたりが次第に人の声でざわめき出した。花火大会が終わったようだ。僕はカズミの胸とお尻に当てていた手をさりげなく離した。
その時、
「あ……」
カズミがスマホを取り出した。画面を見つめて僕に向かって笑った。
「アミと、ミナコと、チサトが、着付けが乱れたから来てくれって。ほな、また今度ね。」
カズミは、ゾロゾロと戻ってくる人の流れに逆らうように走って行った。
僕は、あっという間に去ってしまったカズミに不安を感じてた。
「カズミきっと、僕の下心に気づいて逃げたんだろな。」と。