xxxHOLIC+〜憂鬱来て〜(前編)-1
世に不思議は多けれど それほど奇天烈 奇々怪々なデキゴトも
ヒトが居なければ
ヒトが視なければ
ヒトが関わらなければ
ただのゲンショウ
ただ過ぎていくだけのコトガラ
人
ひと
ヒト
ヒトこそ この世で最も摩訶不思議なイキモノ
ビルとビルの間にひっそりとたたずむ一軒のお店。
どんな願いも悩みもただ必然によって解決する店。
「四月一日(ワタヌキ)お酒」
「もう、侑子さん。あんまり昼間っからお酒は飲まないほうがいいですよ」
この店のアルバイトである四月一日君尋は割烹着姿で店の主である壱原侑子に進言した。
「私が飲むと言ったら飲むのぉ〜!」
「はいはい。で、今日は何にします?」
「うーん。やっぱり日本酒よね、あてはイカ飯」
四月一日はため息まじりに返事を告げると台所へと足を向けた。
店の前、頭に黄色いカチューシャをした高校生らしき少女が通り過ぎようとしたが、不意に足を止めた。
「何この店。怪しい雰囲気満々じゃないの! これはSOS団としては調べてみる必要がありそうね」
少女は目を輝かせて通り過ぎようとした方に駆けていった
少女の名前は涼宮ハルヒ、ありきたりな世の中にあきあきしている少女である。
侑子は何かを感じたのか不意に窓の外を見た。
「どうしたんですか、侑子さん?」
「世界を作り変える者、ヒトはそれを神と呼ぶわ」
「はあ」
侑子はそれきり何も言わずにとっくりを傾けた。
翌日。場所は小高い山の上に建つ北高校。
ここには、涼宮ハルヒが作ったSOS団なる活動内容不明の集団が存在する。
「昨日、私へんなお店を見つけたの」
ハルヒは満面の笑みを団員に向けている。
「とりあえず、聞くだけ聞こう。へんって何がへんだったんだ」
SOS団立ち上げの時からの団員でおもに雑用とつっこみ担当のキョン(当然あだ名)が副団長である古泉一樹と将棋を指しながら聞いた。
「もう全体的にへんなのよ。 看板も出てないし、なんか怪しいオーラを半額サービスで売り出してもまだ余るぐらいに出していたわ」
ハルヒはこれでもかと言うほどに力説してのどが乾いたのか机に置かれていた湯呑みを持ち上げると中の物を一気に飲み干した。
「みくるちゃん、おかわり」
「はーい」
ハルヒが突き出した湯呑みをメイド服を着込んだ少女、朝比奈みくるが受け取り急須からお茶をそそぐとまたハルヒに差し出した。
「で、その店に今から行こうと思うんだけど」
「すみません、僕はバイトがあるので」「しょうがないわね。 みくるちゃんは?」
みくるは軽く首を振って見せた。
「今日は用事があるの」
「みくるちゃんまで。 じゃあ有希は?」
部室の隅で分厚い哲学書を読んでいた長門有希は頭を持ち上げて
「無理」
これだけ言ってまた本に視線を落とした。
「有希もなの! じゃあキョン行くわよ」
「俺には都合をきかないのか?」
「あんたはどうせ暇でしょ」
キョンは何で今日は予定ががら空きなんだと嘆きたい気持ちになった。