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「あなたに毒林檎」
【SM 官能小説】

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「あなたに毒林檎」-1

【この林檎には毒があります!ご注意ください】

 というラベルのある林檎をとある果物屋で見かけた。
ぎょっとしてうすぼけて老齢な店主に聞いてみた。

「本当??」
と私。

「はい〜」
店主のそっけない返事……。

「こんなもの売っていいの?」
また、私。

「目当てのお客さんいるから」
またまた当たり前の返答……。

 思わず唸る私の目の前に毒林檎を差し出す店主
そのまま、ほれほれとその林檎を試食しろと左右に揺らしている……。
とんでもないことだと私は口を真一文字に結び嫌々をするがあまりにあほらしかったのできびすを返し道を歩き出そうとした時だった……。

「いいかげんにしてと」
言いかけた時、不意に毒林檎の一部噛みちぎってしまった!

「ウエップ ゲポップ べ べ べ」
 噛みちぎった林檎の破片を私は猛烈な勢いで吐き出した……。これでも可愛い女子なのに辺りの様子をうかがうことなく、思いっきり下品に果物屋の周りに飛び散る唾と赤い果肉たち……。

「食べちゃったね?」
とへらへら顔の店主……。

「食べてないです!」と私。 
 そのへらへら顔に拳を一発お見舞いしてやろうかという衝動に駆られたがなにやら眩暈を起こしてきた……。まさか本物?!
私の苦悶した表情を見切ったように店主は囁いた。

「覚えてないのかい?……」
老齢なわりに背が高く猫背のじーさまが言い放つ。

「え?」
困惑気味の私。

「これはあんたの毒林檎……」
思い切り猫背にしながらこちらに顔だけ伸ばし再び言い放つじーさま。

「このじーさまいかれてる……」

 私は怖くなって一目散によろよろする身体に力を込めその場を離れた。
口の中にはまだ真っ赤な毒?!林檎の味が残り皮や肉片が歯の間に挟まり最悪の気分……。
頭の中ではまさか、まさかねっていう言葉がワンワン鳴り響き、鐘付堂の鐘の中に頭を放り込まれ叩き棒?であちこち叩かれているみたいだった……。

 自宅の扉を開けうがいをしたところまでは覚えていたがショックのあまり寝てしまったらしくぼんやりと、子供の頃の私を思い出していた……。私をからかい脅えさす近所のおじさんのことをだ……。
今日の出来事はまさにその人とのやり取りみたいで、今にして思えばわたくしとしたことがトホホで、かなりアホらしく、馬鹿みたいーなのだが、起こしてしまった事に対して自責の念は生まれる物で後悔は先に立たないのであった……。
笑う気も起きないくらい落ち込んでいた……。
 寝起きのまま飛び起き頭を抱えてベッドに座っていると開けてあったベランダから涼しい風がカーテンの裾を揺らし入り込んで来ていた。
すでに夕方らしかった。

 さっきの眩暈はなんだったんだろう?
じーさまの毒気に当てられたぽいなとあくびをしながら背を伸ばし元の元気が取り戻せている事を願った。

 テレビの前のソファに座りなんとなくチャンネルを変える……。
見たい番組も雑誌もやりたいゲームソフトも無かった。行きたい所に行けずじまいだったのでかなりブルーな気分だ……。元を取り返すにはあまりにも時間がなさ過ぎて悲しい気分に浸っているとノックの音がする。こんな時に誰だろうとドア越しに覗き穴を見てみると見覚えのある大きな目がこっちを見ていた。

 彼だ。うきうきとドアを開けるとなんだかお酒臭い匂いでむっとしたが、そのまま彼に抱きつくと今日の出来事を話して聞かせた……。

「”きちがピー”じーさんにからかわれたんだよ」と、にっこり微笑む彼。
 お酒の匂いは友達の引越しを手伝いに行き蕎麦をご馳走になったとき飲んできたんだそうだ。今日は来る日じゃなかったのでは? と聞くとお酒飲むとラーメン食べたくなるだろう? 案外早く終わったんでついでに来てみたとにやにやしている。
「この近所に美味しいラーメン屋なんか無いよ……???」
と言いかけた時ふいに唇を奪われそのまま床に押し倒されてしまった……。

「お蕎麦食べてきたんでしょ? 私はラーメン? 麺系女なの? うふふ」
彼の鼻に噛み付く……。

 ふたりで床の上で笑い転げ合い優しい彼の笑い声やキスが今の私には最高の良薬で、
そのまま彼の大きな背中にうっとり手を回し熱い抱擁のなすがままに応えた。


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