「あなたに毒林檎」-20
あの日以来、目覚めた心は打ち震えその時が来るのを待っている……。
床に転がされ素手でお尻をバシンバシン叩かれたい一心なのよーって、このままだとどうにかなりそうだった……。
掃除でもして気を紛らわせようと思い立ち掃除機に手をかけたまでは良かったが、ホースを股に挟み込み擦り付けている始末……。
それはそれで立派な変態行為なのだけども、このまま、一人変態遊びが止まらず転がり堕ちて行くのではという恐怖もあった……。
過去の自分から脈々と育ってきた性癖はこのまま暴走を続け、場末の風俗でM嬢と化し喘いでいる私なのかもしれないのだ……。
だが、私の妄想はいつも極端でいけない、、、そんなことは多分無いだろうと頭をかぶり振った。
だって私はやってはいけないことと、して良いことの差を判断しこれまで生きてきたんだから……。
だけど、また萌えてきた……。
何をどう想像しても萌えてしまう……。
どこの誰とも知らない男にお金で買われる風俗嬢……。
もしも、自分がそうなってしまったら……。
日に何人か取るお客の嗜好に合わせ責められるのだ……。
感じてきて鳥肌が立ち身震いした……。
生理中でタンポンがあって良かったとも思った。この分だと一晩中濡らしっぱなしの牝猫? 牝犬? 雌豚? いや、動物でも人でも何でも良いが、一晩中??!! キャ〜〜〜身体中の細胞が刺激溢れる性の喜びに飢えているのだ。
何か妄想するたび、頭を壁に擦りつけ腰をくねらせた。クネクネとヌメヌメっと……。
頭のいかれた変態さんにだけはなりたくなかった……。だからこそ主様は重要なのだ。
彼氏様は今どこで何をしておられるのだろうか?可愛いしもべはここにおりますよ?
早く奪いに来て下さいご主人さま〜(一方的に決めたことだけど)……。
彼氏様が来るまでまだ多少の時間はあった。シャワーでも浴びて気持ちを落ち付かせ湯上りの女を演出しておこうか?
湯上りの火照ってた身体と濡れそぼる髪の毛や石鹸の香りはきっと男心をくすぐるに違いない。
よくあるドラマでお馴染みのシーンを見てそう思い込んでいるだけなのだが、自分がやっても色っぽくは無いと思うが彼氏様は案外気に入ってくれるかもしれない……。ちょっと気分出してシャワー浴びてみるか、うふふ〜……。
「ヒック!」
あ、またしゃっくりが出た。
こないだのしゃっくりはなかなか止まらず大変だったのだ……。
私は横隔膜の痙攣をなんとか阻止しようと腹筋に力を込めたり息を止めたりしながら抵抗を続けたが、バスルームに入ってもしゃっくりは止まらなかった。
うがいしたりその場で小刻みに走り込みなど続けたのだから萌えた気分はもうどこかに行ってしまった。髪の毛をドライヤーで乾かしていてもしゃっくりは止まらなかった……。
これから彼氏様が来ると言うのにしゃっくりでお出迎えはまずいだろう……。
「ヒック、、、、」
また出た!
彼氏様が来ても良さそうな時間にチャイムが鳴る。
うきうきして覗き穴を覗くと彼だった。あれ?と私は思った。
普段の彼氏様はチャイムなど鳴らさないのだ……。
鍵を開けた途端彼氏様は雪崩れ込んで来られ私を驚かせたが、ドアを意味深にバタンと締め、内鍵をガチャンとかけられた。
「ヒック……」
またしゃっくり。
いつもと違う雰囲気の彼氏様は私の前に立ちすくみ大きなジェラルミンケースをどかりと床に投げ出した。
今までそんな物持ってたの? と言わんばかりで年季の入った頑丈かつ銀色の箱……。
何これ? って顔を私がしていると、聞くのが早いか見るのが早いか鍵を瞬時に開き放ち数々のへんてこりんな道具たちからエルメスの乗馬鞭?! を取り出しこう言われた……。
「俺は鞠絵、お前を愛している。叩かせてくれ。もうたまらないんだ、叩きたい。愛してるんだ!」
彼は声を震わせている……。
突拍子も無いことで私はおろおろしてしまい、ヒ、ヒック……。後ずさりしたが、彼は追ってきた。
私は、逃げないで止まれと自分に命令したが拒否していた……。
だって、いきなり乗馬鞭は無いだろう? 今日はこっちだって色々心の準備をするため悩みながら貴方様をお待ち申し上げておりましたのに。
あなた様のやり方は混乱を招くだけでございます。いきなり馬になれだなんて、私のあそこはもう濡れ濡れです〜。
あ〜王子様、愛しのご主人様! とりあえず心は決まっておりますが、身体が言うこと効きません……。
しかも、雌馬は想像しておりませんでしたわ〜〜〜〜〜!!!!!