特区のニーナ-3
ニーナは決して幸福な子ではなかった。母親はニーナを置いて父親と別れており、しばらく預けられた父の実家から通った学校では、特区人だ、外国人だといじめられた。美しいニーナに対して、取り分け女子のいじめが酷かった。ニーナはそれですっかり同性への信頼をなくしてしまった。自分を男だとは思わなかったが、女の自分を憎んでいた。つまり、自分の心も体も憎んでいた。ニーナは、憧れていた親戚の鉄矢が、子供の女の体が好きだと知った時、自分が初めて、そのままで人の役に立てるのだ、価値があるのだと、心底喜んだものだった。
この二人は互いを必要として求め合っている。人をもし生かそうと思うならば、この二人の行為を止めることが、何の良い結果をももたらさないと知らなければならないだろう。
ニーナは既に生娘ではなくなっていた。会うたびに、二人は繋がれるだけ繋がった。鉄矢が空になるまで、はらわたに呑み込んだ。鉄矢の体の何処でもいい、しかし常に自分に入っていることをニーナは求めた。女についての疑問が鉄矢に残ることをニーナは良しとしなかった。どんな女を相手にしても勝ち誇ってほしかったのである。だから、鉄矢の求めることは全て許した。それどころか、乱暴にされればされるだけ、自分が解消していくようで嬉しかった。自分が男に恥をかかせられることは、そのまま女への復讐であり、好きな鉄矢に対しては喜びの奉仕であった。ただ、一つの絶望の形には違いない人生を、ニーナはこの歳でもう送っていた。こんな子供は死からも遠くない。死なないでいられるのは、鉄矢がいるからであった。