新しい恋人-4
人気のない水族館近くの公園、私と彼は川近くのベンチに腰を掛けた。
「浮気じゃないよ、彼とは正式に別れたんでしょ?電話で話し合って…。」
「…うん。」
自分から打ち明けておいて力が出ない。
「でも、私がこうして楽しんでいる時にも彼佐伯君は青森で大変な思いをしているんじゃないかって、本当に別れて良かったのかって。」
「……君は優しいんだね、本当に。」
「ありがと。」
「大丈夫だよ、彼はきっと向こうでも上手くやってる。」
「風馬、君。」
「言っとくけど、彼を好きになる事は出来ない、分かってね…好きな女の子が別の男と一緒にいると、どう頑張ってもむっとしちゃうんだ。」
私も、嘗て佐伯君が早乙女先輩と一緒に居た時だって同じ気持ち。
「だから笑ってなよ。」
「え?」
「彼だって君が幸せそうに笑っている事を望んでいる筈だ、時々電話やメールでも何だったら青森に行ったらどう?それなら。」
「…確かに、でも彼の事、私が居なくなった後、作り笑いを止めて、そして。」
「……。」
「佐伯君、本当に。」
「君は今誰の恋人なのっ!」
しまった、今は風馬君と付き合ってるのに。
「確かに僕は君が僕を本気で好きかどうか疑ってる。」
「あの告白は本気だよ。」
「だったらぁ!僕を見てよ、僕の事だけを思ってよ!」
あの風馬君が激怒してる…。眉をとがらせ、両手で肩を握り強引にこっちを向かせ。
「ゴメン、君の気持ちは分かってるのに。」
「ううん私こそ!優柔不断で君を、いやこれじゃ佐伯君まで。」
佐伯君、風馬君にとっては嫌いな言葉、それを耳にすると確実に不快になり。
「御免なさい、本当にもう。」
「いいよ、無理に忘れようとしなくても、だから。」
「っ!?」
そう言うと彼は突然私の背中に触れ、そしてそのまま力強く自分の方へと押し寄せ、キス
をする。
「……。」
「風馬、君?」
「僕がこれからそんな不安を忘れさせるくらい楽しい思い出に作り替えてあげる。」
「ありがとう…。」
佐伯君の事は忘れない、けど忘れるようにする。
彼と共に。
「よしっ、じゃーまた中に入るか!まだ全然観てない。」
「そうだね、私…お弁当作ってきたから。」
「わーい!またサンドイッチ?」
「ううん、ナスビ料理よ。」
「えー、僕それ苦手なのにー。」
「ナスビは体に良いのよ?子供の頃もオバサンに無理やり食べさせられそうになって食べ物投げて怒られてふてくされてどっか行っちゃったもんね。」
「んもぅー、そんな事ばっか思い出してー。」
「うっふふ、他にも男の子なのに虫が苦手で。」
「それだったら君だって「辞書引っ張って」って言われて本当に引っ張ってページ破いて
喧嘩になったり。」
お互い笑い合い、昔の話で盛り上がる。
何だかいい感じ。
本当にありがとう風馬君。
「っ!」
今度は私が彼の頬に唇を重ねる。