Yuki:「似ている人」-4
食べ物で釣られて、自身の自慰行為について簡単に吐露してしまうところについて俺なり説教をしてやろうかと考えたが、報酬を与えなくては。
自慰行為事情を聞き出すための交渉材料。それが瑠奈が好きなとある地元の有名店のモンブランだから、随分と安いものだ。
恥ずかしいことを赤裸々に告白したことを本人は忘れてしまったかのように、俺が冷蔵庫から取り出したモンブランに目を輝かせている。
「うわぁ…久しぶりなんだよねぇ…最近食べれてなかったから恋しくなっちゃって…!」
淹れたての紅茶とフォークを差し出すと、幸せそうな笑顔を振りまいてモンブランを食べ始める。
俺はその幸せそうな瑠奈の顔を向かいの席に頬杖をついて座って眺めていた。
何だか、こういう何もしないで瑠奈の顔をただ眺めているのも悪くない。
そう思ったのと同時に、これは恋と何が違うのだろうと自分自身に問う。
俺は、確実に陽よりも瑠奈のことを好きになっている気がする。
しかしそれは冷静に考えれば肉体的な部分に過ぎない。
じゃあ陽と瑠奈とで何が違ったか、陽より先に瑠奈と出会っていたら、何かが変わっていたのか。
俺は彼女を肉塊として扱ってしまっていることに変わりはないのだ。
その肉塊に、愛着が湧いてしまったのだろうか?
トライアンドエラーを繰り返して考えてもやはり答えは出てこない。
強いて挙げるとすれば。いつか終わりが来るということに上乗せされた、到底信じ難い俺たちのギリギリの肉体関係が、吊り橋効果みたいになっているのだということなんだろうか。
その背徳感に塗れた関係を切り離して瑠奈への気持ちを導き出すには、どうやら時間が少なすぎるみたいだ。
「ごちそうさまでした!」
そうこう考えているうちにモンブランを綺麗に食べ終わった瑠奈は、少し冷めた紅茶を啜る。
「瑠奈ちゃんさぁ」
俺は一息ついている瑠奈を現実に引きずり降ろすように問いかける。
「オナニーしてた時、俺のどんなことを考えてしてたの?」
飲んでいた紅茶のカップを静かに置いて、瑠奈は顔を伏せる。
「それは…、言えない…。」
「ふぅーん…」
俺は勢いよく椅子から立ち上がり、
「瑠奈ちゃん、俺の部屋いこっか。」と瑠奈に言った。
うん、とは言わなかったものの半ば強引に手を引いて俺の部屋へと連れて行ったが、抵抗する様子もなく、部屋のベッドへと腰掛ける。
「今からさー、DVD見よっか。」
「ん…?なんのDVD?」
と、瑠奈は首を傾げる。
俺はベッドに座る瑠奈を後ろから抱きしめて、DVDの再生ボタンを押す。
テレビの画面には、あの瑠奈に似た白石はなの姿が映し出され、ベージュのベビードールを纏って今の瑠奈と同じようにベッドの上に座って微笑んでいる。
「これって…!」
瑠奈がこちらの方を首だけ向けると同時に再生したAVに男優が登場する。
(んっ)
色気のある声を漏らし、しばらく男優と舌を絡ませてキスをした後、今の俺と同じように白石はなに後ろから抱きつく。
(きゃっ…!)
今から犯されてしまうというのに、少し楽しそうな声を彼女は発している。
白石はなの豊満な胸を持ち上げるように触りながら、男優が口を開く。
(お名前は?)
彼女は胸を触られて嬉しそうにしながら、
(白石はなです。)と一言。
瑠奈はいつの間にかDVDに夢中になっている。
その後も白石はなは、男優からの質問に笑顔で答え続ける。
スリーサイズ、週の自慰の回数、初体験の時の年齢、その相手、自慰の時なにを考えてするのかなど。
彼女は嫌な顔1つせずに淡々と答えていく。
そして、質問が全て終わりカメラが切り替わる。
彼女のカメラ目線は、彼女がベッドに座っている位置の前方に三脚付きのビデオカメラで撮影されたものだということが、ここで判明する。
「これって…!」
そう、以前瑠奈と下着に買いに行った時、好みの下着を着せて写真を撮った時とシチュエーションが酷似している。
それに瑠奈も気がついたようだ。
白石はなはそのままカメラ目線を保ち続けながら、男優に胸を荒っぽく触られて甘い喘ぎ声を発する。
これは俺が最も好きなAVの1つで、何度も何度もこれを見て射精した。
白石はなに似ている瑠奈と出会ってからは尚更だ。
当然、俺のペニスは硬く勃起していて、瑠奈に後ろから抱きつくこの体勢だとこの肉棒が当たるのは避けられない。
俺は瑠奈の尾骶骨のあたりにわざとらしく硬くなったそれを押し付けて、そこで一時停止ボタンを押した。
自分のペニスが瑠奈の体にめり込むくらいの力でを強く抱きしめる。