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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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離れていく二人-7

「へぇー、お店に寄ったら。」
「うん…人が一杯集まってて、チラッ顔を赤くして泣いた君の横顔が見えて。」

それからさっきの常連さんに自分は知り合いだって言って、お爺ちゃんの行きつけの病院へ向かったそうだ、どちらかと言うと文系で体力のない彼が態々息を切らして。

「風馬君、お爺ちゃんと何か接点あったっけ?」
「ないよ。」
「ならどうして。」
「決まってるよ。」
「え?」
「君が、向こうで寂しい思いをして、苦しんでるんじゃないかって、そう思って。」
「私が一人で居るかどうか何て分かるの?」
「それは分からなかった、どーせ伊吹さん辺り来てるのかぐらいは予想してた。」
「だったら。」
「でも、居ても立っても居られなかったんだ、君が顔を赤くしてお爺さんを見つめているのを見てら、もう…無我夢中で…。」
「風馬、君。」

彼が来てくれたお陰で気分を間際らす事が出来た、ただその人物が佐伯君で無い事が残念だけど。

「こんな僕が言うのもあれだけど、君には笑っていて欲しいんだ。」
「……。」
「泣いた君の顔何て見たくない、もう君を苦しめたくない。」

彼が私に付きまとわなくなったのはこの理由だ、けれども私の恋人である佐伯君、つまり彼にとっても恋敵への敵意をなくす事は容易な事ではない。

隣に座る事なく近くに立つ風馬君、その姿は前にどんな手段を使ってでも私を自分の物にしようとするしつこい彼ではなく、ただ純粋に友を心配する子供の頃と変わらない心優しい私の大事な幼馴染そのものだ。

「どうして私の家に来たの?」
「…最近元気がないように見えたから…。」

これも優しさか、でも今までの事を考えると素直に受け止める事が出来ず。

「本心はそんな事、思ってないでしょ。」
「えっ?」

我れながら何と意地悪な事を。

「…まだ私に未練があって、それで。」
「中らずと雖も遠からず…かな。」
「…。」
「確かに、こうして優しくしていればもしかしたら振り向いてくれるんじゃないか、これはチャンスだ、伊吹さんが居なくてラッキー、何て思ったりもした。」
「……。」
「でも、君を心配して店に来たのも事実だし、独りで寂しい思いをしてるんじゃないかと
思って走ってきたのも事実だよ。」

半分半分って訳か。

「あの、柊さんの身内の方でしょうか?」

書類を持った看護師が私の元にやってきた。

「はい、そうですけど…。」
「すみませんがこの書類に分かる範囲で良いんでご記入願えませんか?」

手術の手続きか、私はそれに応じる事に…。

「若葉、ちゃん?」
「………。」

風馬君と会話してる時は忘れられたけど、いざこうして手術の手続きにペンを握った途端
一気に現実に戻された気になって、また胸がドキドキしペンを手にしたまま動かない。

「?あの、早くしてくれませんか…。」

そんな私に気を遣う事もなく冷たい事言う看護師、他に患者さんがいて忙しいのだろうけど…。

「あ…。」

そんな時、風馬君が私の持ってたペンと取りあげ、別の人が記入しても問題ないかどうか
看護師に聞き、軽く大丈夫と言われ、記入する気力もない私に代わって書いてくれた、
住所や電話番号も彼に聞かれ、私が消えそうなか細い声で答えて。

それから看護師が無表情で事務的にお礼の言葉を言い、この場を去って行き。

「お爺、ちゃん。」
「…深呼吸しなよ、そしたら少し楽になるよ。」

言われるがまますぐに実行に移す、すると本当にラクになり。

「暖かい物何か買ってくるね、お茶で良い?」
「あっ、うん。」

そういうと彼は素早く自販機へ向かう。

今の彼はとても頼もしい、…もし私に彼氏が居なかったら。

「はい、ほうじ茶。」
「あっ、ありがとう、早いね。」
「うん、何か独りにしちゃいけない気がして。」
「!!」

私の今の気持ち、苦しさを分かってくれてるみたい。

「あはは、それなら一緒に行けば良かったね。」
「良いよ、どうせ近くだし、今は無理しない方がいいよ。」

その声からは野心も欠片もない、もっと早くに彼に出会っていたら、でもそれでも私は
佐伯君が好き、風馬君よりも。

そんな時、手術中のランプが消え。

「あっ、終わったみたいだよ。」
「そうみたい、あっ。」

椅子から立ち、手術室へ近寄る、すると私の腕に彼の手の平の感触がする。

「風馬、君。」
「……。」

彼自身気づいていない。


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