百均がアタシを変えていった-2
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しばらくしてアタシは毎日、百均でオヤジをさがしていた。
オヤジにもらったライターとコンドームは、すぐになくなってしまった。
アタシが使ったわけじゃない。学校の友達に見せたら、
「欲しい」「欲しい」
なんて言われたもんだから、アタシは調子に乗って残らずあげてしまったんだ。
みんなそれから、
「ねぇ、あれ また手に入ったらちょうだいね。」
なんて事を言うもんだから、アタシ、オヤジになんとかしてもらえないかな、なんて思ってたんだ。
そんなある日、
「何か、いいのはありますかな?」
オヤジの声がした。
アタシが何も言い出せずにいるとオヤジは、
「また、ライターとコンドームですかな。」
と言った。アタシはテレ笑いしながらうなずいた。
するとオヤジは言った。
「じゃあ……キミのエッチな写真、撮らせてくれるかな?」
アタシとオヤジは、店を出たあと、再開発ビルのハズレにやってきた。そこは非常階段の踊場だった。
エッチな写真を撮る……オヤジはハッキリ言ったのにアタシはついてきてしまった。
オヤジはポケットから使い捨てカメラを出した。そしてギリギリとフィルムを巻き上げると、
「じゃあ、ちょっと階段のぼって、後ろむいて。」
と言った。アタシが言われた通りにすると、
「はい、ズボンとパンツずらして、お尻見せて。」
背中からオヤジは命令した。アタシは覚悟きめてズボンとパンツをずらせた。
パチャッ!
アタシのまわりにかすかなフラッシュの光が見えた。
ギリギリと音がするとまた
パチャッ!
それが何回か繰り返されると、
「はい、ありがとう。パンツとズボンを上げて。」
オヤジの声がした。アタシが元どおりの服装になって後ろを見ると、そこにオヤジの姿はなかった。
「あれ……、お尻だけだったのかな。」
足元に布の手さげ袋があった。百均で見たことのあるデザインだ。どうやらオヤジが置いていったらしい。
「え…… こんなの入ってる。」
ウチに帰って見ると手さげ袋の中には、ライターとコンドームにくわえて、タバコの箱がいくつか入ってた。
そして、ちいさな「がま口」があった。パチンと開いてみると、
「す…… すごい。」
百円玉と五百円玉がつめこまれてた。
「五…六千円くらいあるのね。」