さよなら、愛しい人…-3
「え、青森へ…行っちゃうんですか?」
人気のない薄暗い公園、大事な話があるから…、と急にメールで呼び出された私。
目を丸くする彼、話が違う…とでも言わんような。
「俺、青森に行った方が良いんだろ?」
いけない、そうだった…彼ならに決意してくれたのに、一瞬私の:本音:が…。
「御免なさい、彼方なりにきちんと悩んで考えてくれたのに…。」
「柊、さん…。」
私の想いは、伝わった…そんな気がする。
「俺、ずっと君の事ばかり考えていた…、どっちの道へ進めば君が幸せになれるのか、苦しい思いをしないのかって…。」
「最初は青森へ行かず、ここに残る事を考えた…、その方が…。」
「私に会えるし、私に寂しい思いをさせる事もない…ですね?」
思わず話を遮り、先手を打ってしまった…、けど彼は文句を言う事無く、静かに首を縦に
振る。
「けどそれは違った、君は自分が寂しいのをぐっと堪え俺の幸せ、本当の幸福を願った…
ならそれに答えようと思う。」
かつて彼にとって恋敵だった風馬君をいじめっ子から助けた時を思い出す、彼は成長したんだなぁー。
ダガストレートに言い過ぎて何処か実感が沸かない、私の為に適当に言ってる感じがまだ残る、いい加減な所は彼の悪い癖だ。
「なーんてなっ!本当は自分の為なんだ!兄貴から一緒に住もうって誘われた時からずっと行きたいって思ってて…。」
「佐伯、君。」
清々しい程の笑顔、とても嘘を言ってるようには見えない。
「ありがとう、俺の事、俺の不幸を本気を嘆いてくれて、俺の為に親父に本気で怒ってくれて、俺の幸せを本気で願ってくれて。」
「……そんな、私は。」
「君は本当に優しい人だ。」
「よして下さい…、好きな人の幸せを願う何て当たり前の事じゃないですか。」
じわじわと胸が締め付けられていく。嬉しい、嬉しい筈なのに。
彼は去らなければならない、でないと本当の意味で幸せを手にする事はできない、けどやっぱり居なくならないで欲しい、だから。
「!!」
私は彼に思いきっり抱き着いた、もう永遠に離さない勢いで。
「大好き、本当なら行って欲しくない。」
「……。」
「でも、私の我儘で君が不幸になる何て耐えれない、君には幸せに、ずっと笑って過ごしてほしいから…。」
彼は少しの間を置き、それからゆっくりと私に口づけをする。
「向こうに行ったらメールする、電話だって、たまにはここにも来る。」
穏やかでそれでいて少し頼もしい顔つきで私を安心づける。私は彼と買い物に出掛けた時の事を思い出す。
「買い出しの時、君私に言ったよね?将来私に料理を作って欲しい、買い出しも今度は夫婦として…って。」
「あ、あぁー、でもそれは。」
「良いよ。」
「え?」
「いつか大人になって君がまたここに戻って来たらその時は…、休みの日は買い出しをして、帰りにとっておきのカフェに寄ったりして、料理も君の好物を精一杯作って、疲れて帰ってきた君がそれを食べて、フフ子供みたいに喜んで「おかわりっ!」って空の皿を差し出して、それで。」
言い出したら止まらない、彼との幸せな未来図が。
「どうしよう、考えれば考える程、苦しくなる…、いっちゃ嫌だな。」
そういうと彼は私をギュと抱きしめ、そのままキスをする。
「…何度だってするよ、君が苦しくなくなるまで、ずぅーと気が済むまで。」
「佐伯、君。」
こんなにも暖かい事があっただろうか、不思議とラクになっていく、私は彼から軽く離れもう大丈夫、と言う。
「本当?」
「えぇ、御免ね…私ったら。」
この日の星空はとても輝いて見えた。
青森でも同じ光景を目にするのだろうか…。