美しい親子愛!! セーガン博士の特攻作戦!!-5
セーガン博士「コリン…。こんなになるまで地球のためによく戦ってくれた」
コリン「…父さん、お礼なんかいらないよ。僕は自分のためにやったんだ」
セーガン博士「コリン! 意識が戻ったのか?!」
コリン「まぁね…」
セーガン博士「今は戦いの事は忘れろ。ゆっくり治療に専念するんだ。マックロ―がお前をすぐに治してくれるさ」
博士は無理に笑顔を作りながらそう言ったものの、涙が溢れて鼻声になってしまうのは隠せなかった。
コリン「気休めは言わないでくれ。僕の身体はもうダメなんだろ?」
セーガン博士「ギクッ!!! な、なぜそんなこと言うんだ? そんな弱気でどうするんだ! お前は治る! 治るさ、絶対に!!」
コリン「自分の身体のことは…自分が一番わかってるさ。正直に言ってくれ」
セーガン博士「…う、う、宇宙放射線病だ…。末期で全身に転移が広がっている。マックロ―が必死に食い止めてはいるが…細胞破壊が…止まらない…っ!」
博士は絞り出すようにそう言うと、涙がこぼれ落ちるのを見せまいと空を見上げた。
震える拳は固く握りしめられ、爪先には血がにじんでいる。
コリン「はは…。E−1星を脱出する際、えらく手間どっちまってね…。脱出用の光子ロケットがステッドラー親衛隊の迎撃機に集中攻撃を受けたんだ。かなり派手に被弾したから、その時破損した外壁から内部にずっと放射線が入り込んだんだろうな…」
セーガン博士「なぜこんなになるまでほっておいたんだ! なぜもっと早くに私に話してくれなかった?! そうすればきっと何か手が打てた筈だ!」
コリン「ダメだよ。そんなことしたらパイロットを下ろされちまうだろ? ステッドラーの地球侵略計画は待ってくれない。僕がガングリオンを一番上手く操れるんだ…」
セーガン博士「お前は…お前は、何という愚か者なのだ…! 私にとってはE−1星よりも、地球よりも、お前が一番大切なんだぞっ!! お前に死なれたら…私はどうすればいいのかね!!!」
かすれ声で喋るコリンを見つめ、博士は慟哭した。
コリン「僕の命が尽きるのが先か…。E−1星の侵略軍が壊滅するのが先か…。どっちが先か競争だ。僕は…きっと勝ってみせる」
セーガン博士「大丈夫だ、助かる方法はある。私に任せろ。急いでクローン体を作り、お前の記憶を移植する! 大丈夫、天才であるこの私が研究するのだ!! マックロ―が細胞破壊を食い止めている間に、きっと完璧な移植法を見つけてみせる!!」
コリン「期待しないで待ってるよ。…ごほっ、ごほっ」
コリンの声は弱々しかったが、その瞳には炎が燃えていた。
美しい地球を絶対に守るという意志が熱く燃え盛る正義の炎だ。
ブリッジ「♪ジャジャン、ジャンジャジャジャジャン!」
こちらは衛星軌道上に浮かぶ戦闘要塞『バルビツール』。
アクメロボ格納庫ではガングリオンとの対決を明日に控えてクルーの準備に余念がない。
ステッドラー総統は指令室にモーカリマッカーを呼び出していた。
ステッドラー「明日の対決に出撃させるアクメロボはどれだ? まさか1体もないとは言わさんぞ!」
モーカリマッカー「出撃準備は万端にございます。まずはこれをご覧くだされ…」
モーカリマッカーがモニターを操作すると、そこには複数の宇宙艇に牽引された巨大な隕石の塊が2個映っている。
隕石にはハッチがあって厳重な施錠がされており、上から何重にも特殊鋼のチェーンが巻かれていた。
それを見た途端、ステッドラーの顔色が変わった。
ステッドラー「ま、まさか…!! 貴様何処からこれを持ってきた?!」
モーカリマッカー「辺境惑星の地下施設に保管されていたものをわざわざ運んでまいりました」
ステッドラー「こんなことをして一体どういうつもりなのだ?!」
そしてステッドラーはわなわなと震え出した。
ステッドラー「ふ、ふ、ふざけるな――――ッッ!!!」
バシッ! バシッ! バシッ!
ステッドラーはステッキを振り上げてモーカリマッカーをめった打ちにする。
モーカリマッカー「…うぐぐ…っ! あがが…!」
ステッドラー「はぁ…はぁ…はぁ…!」
ボチボチ・デンナー「お…落ち着いて下さいませ、総統閣下!」
ステッドラー「古代遺跡で発見された狂戦士(バーサーカー)、赤騎士テン・ガーンと青騎士セン・ガーン…。かつてアレを封印するのに、我が軍がどれほどの損害を出したと思っているのだ!! 古代文明を滅ぼし、今度はE−1星と地球を滅ぼしかねんのだぞ!!」
モーカリマッカー「我が軍にも甚大な被害が出るであろうことは覚悟の上でございます。ここはまず地球侵略の大きな障害であるガングリオンを倒すことが肝要かと…」
顔から血を滲ませながらも、モーカリマッカーは悪びれもせず答えた。