擬似恋愛(前編)-7
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ぞくぞくと肌が痺れあたしの下半身にも潤みが増した。
手を添わされた夏希ちゃんの猛りが雄々しく張り上がってきている。
衣服を通して伝わってくるそれにあたしも躰の奥が疼いていた。
「もうシャワーしたの?」
「うん」
「シャンプー替えた?」
「うん…」
夏希ちゃんと付き合い始めてから意識してちょっとだけ高いやつに替えた。
「すごくいい香りする…」
あたしのシャンプーの香りを嗅ぎながら耳元で囁く声に鼓膜が揺すぶられる。
夏希ちゃんの興奮した吐息。
掠れた声に全神経が反応していた──
脳髄がうっとりととろけてくる。
「夏希ちゃんは……」
「ん?…」
「夏希ちゃんは…香水の臭いがする」
「──……」
夏希ちゃんは目を見開いた。
「あ、あのっ…っ」
「……」
「これはっ…ちょ…」
「どした?」
「……──っ…」
なんだかあり得ないくらいに動揺している…
ただいつもと違う。ちょっとそう思っただけだったのに…
「何かあった?」
「い、や…っ…なんにもっ」
普通に尋ねてるだけなのに…
「なんでそんなに慌ててるの?」
「ち、ちがっ…別に慌ててなんかっ…っ」
「………」
「……っ…」
訊ねても慌て
無言で見つめても慌て
あたふたと挙動不審な身振りを見せる。
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「な、なんでもないからっ──」
「……」
そんな…
思いきり何かあったよって顔をされて言われても……
今時、香水の香りがする男なんて沢山いる。
男の人の方が種類を知ってるくらい男のお洒落アイテムとして珍しくないのに──
男の隠し事ってこんな小さな切っ掛けから簡単に暴露されてしまう…
何気に言ったことが引き金となって、夏希ちゃんの猛りはあっという間に萎んでいった──。
「なんでもないならいいよ」
これは嘘。
この時点から女の監視の目がどうしても働いてしまう。
一旦見逃して隙を与えて泳がせる……
夏希ちゃんがいったい何を思って“香水”のこの一言にここまで動揺したのか──
あたしは少しホッとした顔を見せる夏希ちゃんの首に腕を回して誘いを掛けた。
「いい匂いする」
「そ、そう?」
抱き締めていうとまだ少し焦りが見える。
「ちょっと甘ったるくて女の子みたいだいけど…」
「──…っ…」
あたしの腰に回ってきた夏希ちゃんの腕がビクリとなった。
夏希ちゃんはあたしの耳元で大きく唾を飲む。
最近少しわかってきた──
夏希ちゃんはあたしの前では役者じゃない。
ズブの素人だ──
なに一つ飾りたてることなく素のままの姿だけを見せてくれる。。。