隣の女房・正枝-1
隣の女房が、庭先で洗濯物を干している。
中野正枝、41歳。
この春から旦那が東京へ単身赴任し、ずっと一人暮らしだ。
「まさえちゃん、そんな可愛いパンティ穿いとるんか、誰に見せるんやろね!!」
カーテンを開け、声をかけた。
「あら、いたの、浩二さん」
「うん、きょう代休なんや。ほんま、ちっちゃいパンティやなぁ。うちのばあさんのババパンと、えらい違いや」
「まあ、何てこと、淳ちゃん(私の妻)に言いつけるわよ」
「ええよぉ。それにピッチリしたジーパンはいて、ケツの線、まるわかりやないか!、男でもできたんか?」
「何、言うてんのよ。浩二さん、欲求不満じゃないの?」
「欲求不満はまさえちゃんの方やろ。良雄(正枝の夫)は帰って来ないの?」
「忙しいんじゃないの、最近は電話もないわよ」
「へぇ〜、女房がそんなちっちゃいパンティ穿いてるのに、心配じゃないのかねえ」
「こんなええケツも、でしょっ!!」
プリンプリンと、これ見よがしに腰を振って、正枝は家に入っていった。
妻の淳子は、その日朝早くから、隣県の実家に行っていた。
正枝もそのことは知っていた。
新聞を読みながらうとうとしていると、勝手口で正枝が呼ぶ声がした。
「浩二さん、おうどんできたから、うちに来て!!」
庭伝いに、勝手口から上がり、ダイニングで正枝と向き合ってのお昼。
家族ぐるみの付き合いが長く、一緒に食事することはしょっちゅうだった。
だが……
「まさえちゃん、俺と2人で飯食うの、初めてじゃないかぁ?」
「そう?、そうかしらねえ」
「たいてい、良雄か、うちのばあさんがおったよ!」
「かもね。でも、浩二さん、そんなん意識してたん?、私のこと、意識したりしてぇ。ヤラしいこと考えてないでしょうねっ」
「何だとっ、ふんっ。考えとったら、どうじゃ言うんや」
「べ〜つにぃ。考えるんは自由じゃもんね!!、ふふっ、考えとる?、考えてない?」
「挑発しとるんかっ、おまえはっ」
「お〜〜、怖っ」
食べ終えて、正枝が片付けを始めた。
その後ろ姿を見て、正枝が朝のジーパン姿ではなく、スカートにはきかえているのに気付いた。
「冷たいコーヒーでも飲む?」
「うん、ごちそうになろうか。まさえちゃん、いつスカートにはきかえたんや?」
「朝よ。浩二さんがへんなこと言うから」
「へ〜え、まさえちゃん、意識したん?、へ〜、意識したんやぁ。かっわいい」
「そりゃするわよ。してあたりまえでしょ。女盛りなんですからねっ」
そう言いながら、正枝はリビングの方へコーヒーを運び、ソファに座った。
私は、その横に腰を下ろした。
二人の腕が触れた。
片方の手を正枝の背中にまわした。
正枝は無言だ。
抱き寄せた。