確たる証拠-6
下に敷いたタオルケットに晶さんから溢れた色鮮やかな血が滲んでいく──
男からしたらほんとに女の人の躰は神秘的だ。
この血を胎内に何ヵ月も留めて赤ちゃんという生命を育む──
この血は命の源。
生命の根源でもある──
俺は腰の律動を繰り返しながら喘ぐ晶さんの唇に口付けた。
激しい揺れとは反対にゆっくりと舌を絡めて見つめる。
「……二人の赤ちゃん…できなかったね…」
「───…」
晶さんは俺の言葉にちょっ驚いた顔を見せた。
晶さんは頷くと俺の肩にしがみついてくる…
「もともと安全日だったみたい…」
「……なんだ…そか…」
晶さんは俺の言葉にふふっと小さく笑い返した。
・
「安心した?…」
「……──」
俺の目を覗き込む。
「安、心した…ってか…社長やマネージャーに絶対デキタから結婚するって言いまくったけど…俺……」
「──……」
晶さんは思いきり驚いたようだった──
「結婚するって言ったの?」
「うん、反対するなら芸能界引退して主夫になるって」
「うそ!?」
「ちょーマジ…」
「………」
「叱られた…もっと働けって…あの髭、人使い荒すぎっ…」
「あは、夏希ちゃん主夫になったら子供養えないじゃん!」
「主夫になってもあるよ金。贅沢しなきゃ五人家族くらいなら余裕で食っていける蓄えあるから」
「………」
「今までほとんど使ってない…今日初めてまとめて使った…」
「何に?」
「………」
「何に使った?」
「言わない」
「………いくら使った?」
「言わない」
「なんでっ?」
「怒られるから言わない…」
民間ヘリ五機 三時間のチャーター
一機、一分10000円で計算して
180万×5=900万
三時間で900万の買い物ってデカイんだろうか?
正直この辺、一般の感覚が俺にはよくわからない…
身の回りの小さな買い物はするけど、高いか安いかを気にして買ったこともないし──
「お婿さんに来るときは給料明細持ってきてね…」
「はい…」
晶さんに言われるままに返事する。
・
「お婿にもらってくれるの?」
「うん、あたしから離れないならしょうがないし…」
「……しょうがなくでももらってくれるの?」
「うん……給料明細しだいかな…」
「やっぱ黒いね、晶さん」
「うん」
顔を覗くと笑いあう。
本音なのか違うのか──
今はまだわからない…
ただ、やっぱりこの人に傍に居て貰うには何かしら弛(たゆ)まぬ努力は必要不可欠なわけで──
「給料足りなかったら働き蜂になるよ俺──社長は二人の付き合いに反対じゃないし……」
むしろ晶さんを救世主だと崇めてるし…
俺は晶さんに口付ける。
「晶さんに認めてもらえるように頑張るから」
「うん」
晶さんは笑って抱きついてくる。
揺れを再開し律動を繰り返す。