確たる証拠-4
「夏希ちゃん…」
大人しく俺に抱き締められていた晶さんの腕が俺の背中に回された──
「ごめんね」
「………」
回された腕にゆっくりと力が込められる…
この“ごめん”は何に対しての詫びなんだろう?
ただ…
ひたすらに抱き締める腕に込められる力──
このほんの少しの彼女の仕草で救われたようにホッとする俺がいる…。
「晶さん…」
「ん…」
「ごめんより愛してるって言ってくれた方が俺は何万倍も嬉しいんだけど…」
「ふふ…」
「なんでそこで笑うわけ?」
「ごめん」
「だから、ごめんよりもっ…」
「愛してる──」
「──……」
「愛してるっ…」
二回も続けて言ってくれた晶さんの声が震えていた…
これは、晶さんなりの懺悔なのだろうか?
少しでも俺に対して罪悪感というものを感じてくれてるのだろうか…
晶さんが侵してきた罪に対して何一つ追及しない俺の気持ちを晶さんはちゃんとわかってくれてるのか疑問だらけだ──
しがみつくように強く抱き締めてくる晶さんの躰を包み込む。
まだまだ手離す気はないから今は取り合えずこの“ごめんね”の言葉ですべてを忘れるしかない──
・
謝るってことは、元彼の所へは行かないってとってもいいんだよね?晶さん……
「ほんとに愛してる?」
「うん、あいしてる」
調子に乗って何度もこの言葉を俺はせがむ。
「どのくらい?」
「このくらい」
晶さんは片手一つの親指と人指し指でとても小さな丸を作って見せた。
「それだけ!?」
「うん、ふふ…」
ちょっとびっくりだ。
「それだけかよ…」
冗談だってわかるけど結構なショックだ。
「なんでそれだけ…」
「夏希ちゃんが浮気するかもしれないから…」
「しないよ、俺…」
「でも先はわからないって言った…」
「──……っ」
「先がわからなかったら手放しで沢山は愛せない…──」
「……──」
晶さんは毒を吐く上にすごく我儘な人なんだと改めてわかった気がする──
この人は俺に無償の愛を求めてる
・
浮気を大目に見た上にそれでもめいいっぱい愛せと言っているようなものだ。
俺が愛して 愛して 愛しまくってやっと──
俺を受け入れる
俺も充分エゴイストなヤツだと思うけど
晶さんはそのうえをいく究極のエゴイストなんだと知った──
「──……別格だな…」
「ん?なに?…なんか言った?」
埋めてた顔を上げて見る表情がすごく可愛かった──
こんな表情でアイツにもせがんだんだろうか?
再び思い出した俺を嫉妬の渦が急に襲う。
上を仰ぐ晶さんの唇を塞いで舌を差し込む。
今夜は愛せないなんて思い込んだことは大嘘だ。
重ねた唇から吐息を吐いていると下半身は瞬く間に熱を持ち隆起してくる──
「晶さんっ…──」
「……っ…あ、生理だよあたしっ…」
「──…わかってるけど我慢できないっ」
「──っ…ちょっ」
「俺ので栓する」
「バカっ!」
「じゃあ素股する」
「バカっ」
「晶さん好きじゃん素股っ」
「……──」
晶さんは困りながらも少し考える顔を見せる。
「ベットが汚れなきゃ夏希ちゃんの好きにしていい…」
「………」
もしもし?…それは晶さんもヤりたいってことにはならないの?
「もうっ!このトラ猫は素直じゃないんだからっ──」
「──!?あっ…ベット汚れちゃ…っ」
「新しいウォーターベット買ってやるっ!」
丸めたタオルケットを腰の下に敷いて晶さんの服を強引に剥ぎ取ると、赤い滑りをたっぷり帯びたそこに俺の熱い猛りを擦り付けた。