キスマーク-1
まだ残る。
あたしの胸もとに。
『ごめん…俺…』
こんなの慣れる人なんているのだろうか。
遊ばれて、そして捨てられる。
まるでゴミみたい。
『大好きなの…』
エンジン音が響く。
『だからさ…さっきも言ったじゃん』
彼の顔が見れない。
『分かってる!…けど…』
彼が微妙だにするたびにあたしも構える。
まだ車の窓が曇っていて、外からの光がロマンチック。
今の状況には似合わない演出だ。
あたしは一体隣の男のどこに惚れたのだろう。
会って5時間。
そんな短い間に果たして人を好きになれるのだろうか。
それはあたしも分からない。
『好き』だと言う言葉を口にしていれば、何故か好きになる。
だけどそれは錯覚だと。
知ってる。
まだ残る。あたしの胸もとには赤いあざ。
嬉しいものが辛いものに。
悲しいものが幸せに。
今日も探す。
あたしを愛してくれる人。
胸もとにあざを残さない人を。