first&last〜第一話〜-1
初めての記憶は、わずか7つの頃。その瞳の光を、まだ私ははっきりと覚えている。
first&last
〜第一話〜
私は、父が一軒家を買ったので、有名な観光地へと引っ越した。前いた場所と劣るとも劣らない田舎さだった。でもそんなことはどうでもよかった。環境が変わるというだけで広い家に住めるというだけで、私の心は仲間と別れる寂しさよりも、期待に満ち溢れていた。
引っ越したのは10月10日。車で5時間もの時間をかけて、私たちは新しい地に入った。『お腹がすいたから』といって、たまたま入ったラーメン屋の息子とは、今も腐れ縁だったりする。
家にやっと着いたのは、夜の10時くらいだったかと思う。出来立ての家に独特の木の匂い。まだ家具もおかれていないリビングとダイニング。そしてステンレスのお風呂。子供部屋。私は、はしゃぎすぎていつの間にか寝てしまっていた。
次の日、朝起きると、母が新しいキッチンで朝食を作っていた。
『あら、めぐ。お早う。今日は近所の方たちに挨拶に行くから、ちゃんとした服着てね。』
母がそう言って私に着せたのは、パッチワーク模様のワンピースだった。外は快晴。引っ越して、第一日目にはふさわしかった。
私はたまらず家の外に飛び出して、ずっと庭で遊んでいた。石ころを取ってきて並べたり、地面に絵を書いたり。するといきなり、お向かいの家のドアがガラッと空いた。
『じゃぁ、母さん行ってきます!』
出てきたのは、二人の男兄弟だった。私は何だかとにかくビックリしてしまって、地面に座り込んだまま固まってしまった。
先に声を出したのは、男兄弟の下の方だった。
『おい、お前、引っ越してきたヤツか?』
第一印象→怖い!だった。その声のかけ方といい、もう少し愛想がよくできないものか、と子供ながらに思った。が、
『う…。うん。めぐみっていうの。』
何故か名乗ってしまった私。すると、
『そっか。よろしくな!俺、勝也!』
今度は、笑顔で応えてくれた。何だか、とても嬉しくなって、私も笑顔で『うん!』と応えていた。
後に、この勝也(カッチャン)は、私の幼なじみであり、私の人生の一部ともいえるほど大きな存在になる。
私は今でも思い出す。真っ直ぐな瞳で私を見て、満面の笑顔で手を差し出したあなたを。とてもとても、眩しい光の中で思い出す。