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黒い訪問者 ルーム1219
【熟女/人妻 官能小説】

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黒い訪問者 ルーム1219-1

 桜の季節になった。その日、藤本が大黒に呼び出されたのは新宿にある高級ホテルのロビーだった。春風に舞う桜吹雪が季節の切なさを感じさせていた。藤本は時計を見る。午後3時を回っていた。大黒は政界を影で操る仕掛け人であり、以前副総理だった頃政府を支えるために作った秘密組織に藤本は属していた。
大黒伊佐夫73歳。白髪頭に白髭で黒縁眼鏡に分厚い唇が特長である。藤本はホテルに入り辺りをぐるっと見渡した。大黒は一番奥のソファに座っていてこっちを見ると手を上げ合図した。隣りには秘書の長谷川という30代の男が黒スーツにサングラスで座っていた。藤本はゆっくりと歩き一礼して大黒の正面に座った。
「どうだ?新兵器は?」
大黒は余裕たっぷりのでかい態度で聞いた。
「バイブショットのことですか?おかげさまで重宝しております」
藤本が答えると大黒は前に身を乗り出し小声で言った。
「さて本題だが、今度の依頼人は川原郁子だ」
「川原ってあの国会議員のですか?」
藤本は驚きを隠せなかった。
「ああ、うちの派閥の川原だ」
大黒は大きく首を振った。藤本は今まで一般人だけしか相手にしてこなかったのだ。
「実は今日総理から電話があってな・・・」
大黒はタバコに火をつけた。
「会長、ここは禁煙ですよ」
秘書の長谷川が慌てて言うと
「構わん。わしを誰だと思ってるんだ?」
長谷川は引き下がった。大黒は続けた。
「総理からは次期改造内閣に川原を考えているそうなんだ」
「それはおめでとうございます」
「だがな、条件がついたんだ」
「条件とは?」
「子供だよ」
「子供?どういうことですか?」
「妊婦でありながら大臣を続ける。政府のイメージアップになる」
「イメージアップのために妊娠させろと?」
「そうだ」
秘書の長谷川は表情一つ変えないでじっと黙っている。
「川原郁子は私の治療を承知したんですか?」
「勿論だ。大臣のチャンスなんて滅多にないじゃないか」
「川原の夫には?」
大黒はにやつきながら藤本の耳元に囁いた。
「実は奴はな、ダメなんだ」
「ダメ」
「アレがうまく機能しないらしい」
「じゃ、余計まずい。できたら誰の子ってことになりますよ」
「心配ない。彼も政治家だ。そのときは副大臣ポストで承諾させる」
藤本は政治の世界がよく分からなくなった。
「さらに彼の年齢と血液型は君と同じなんだ。好都合なんだ。藤本」
大黒のタバコの灰が床に落ちた。藤本は暫く考えていたが
「わかりました。引き受けます」
と返事をするしかなかった。
「そうか、よかった。頼むぞ」
「で、いつ何処へ?」
「急で悪いんだが川原はすでにこのホテルの1219号室で待っている」
「え?今からですか?道具を持ってきてないですよ」
すると大黒は長谷川に指示を出した。長谷川は紙袋を藤本に渡した。
「実はいつものより回転スピードを速くした試作品なんだ。試してくれ」
「でも・・・中身は?」
「大丈夫、中身も君の凍結精子を入れてある」
「わかりました」
「終わったら連絡をくれ。試作品の感想を聞かせてくれ。メーカーにも言ってやらんと」
バイブショットのメーカーは大黒の娘婿が経営している未来工業であった。


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