真夜中の逢瀬-3
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背中にぴったり張りつく感触…
やたら押し付けてくる雌の柔らかみを背中に感じる。
誘ってるのか?
誘ってるよなどう考えても…
芝居の稽古を盾にして結局の目的がこれだ──
やる気なんかある筈もない。
あるのはこっちの方の“ヤル気”だけ──
「やっ……──」
背中から絡み付いてきた舞花の腕を俺は乱暴に掴んだ。
怯えたフリの顔で期待感溢れた表情が鼻につく。
品のない女はどんなに着飾ってもただの雌だ──
可愛いだけの雌はそこらに腐るほど溢れてる。
「舞花……演技の技術を身に付けな…」
掴んだ腕を強引に引寄せてキスするくらいの勢いで顔を近付けて威圧する。
「まずはそれからだよ、俺とほんとの恋人同士になれるか、なれないかは…」
威圧感に圧された舞花が放心状態で俺の背を見送る。
この程度の演技に飲まれるんじゃ、公私ともに俺のパートナーなんて土台無理な話しだ。
てか、まず間違ってもならないし──
餌を人から貰う飼い慣らされた雌には興味ない。
俺が欲しいのは野生の雌だ──
中々手に入らない
野生の貴重な……
誰かさんみたいに唾を吐きかけたり、ゴミ扱いしてくれたり──
挙げ句、靴を投げてボロクソに罵ってくれるくらいじゃないと、俺の役者人生の成長は止まる。
「晶さんもう帰り着いたかな?」
時計を見れば深夜の1時を回っている──
俺が四六時中、想いを深めてる間──
まさか大好きな人が
元彼の腕の中に居るなんて思いもよらず…
実家に帰って眠りついていることを祈りながら俺はタクシーを拾った。
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「ねえ、あの二人より戻すかな?」
「あの調子なら戻るだろ?」
夜道の暗がりをほろ酔いになりながら数人で歩く──
三次会のカラオケでお開きになった同窓会。やっとこさ酔い潰してやった酒豪の姿にクラスメイト達は満足しながら渦中の二人を気にかける。
周りがアニソンで大合唱する中、高槻の膝で眠りこけていた晶。高槻は先にカラオケを切り上げて晶を店から連れ出していた──
「高槻君なんて言ったの?」
多恵子は丸山に聞いた。
「晶と結婚したいって」
「それマジばな?」
「うん、三年したらこっちに帰る予定だって言ってた。だから高槻は寄り戻す気満々でいるみたい」
「………そう…じゃあ、晶の今の彼は捨てだな」
「そう、捨て捨て!ははっ二人上手くいったらまた皆でこっちで飲める!多恵子も帰って来たし、皆戻ってくりゃいいんだよ!」
「高槻──!いっそのこと晶に子種植えてこいやー!」
「はは!!それひど──」
「デカデカカップル復活──!」
夜道でそんな叫び声と笑い声が響く──
元恋人同士だった二人が今どこで何をしているのかクラスメイトにはバレバレ。
二人が上手くいくことを願いながら皆は家路へ足を向けていた。