帰省-8
だってあたしっ…
欧米人じゃないですからぁ!!
電話口で愛してるは
こっぱずいですからぁ!!
「晶さん…」
夏希ちゃんは催促の声を掛けてきた。
「あ、…」
「……」
「あい…してる…っ」
「………」
あたしの決死の言葉を電話越しで確認してクスクスと笑う声が聞こえてきていた。
「晶さん…」
「ん…」
「俺も…すごく愛してる」
「……うん…」
「うんじゃないよ」
「………」
「帰ってきたらいっぱい抱くから」
「うん」
「俺の匂いつけまくる」
「それなんか嫌」
「ひどいな…晶さん」
「うん…ふふ…」
「じゃあ帰ってきたらまたキスマーク付けるから…」
「うん」
「怒らないんだ?」
「うん、夏希ちゃんしか見らいし」
「………」
「……夏希ちゃん?」
「……今、すごい抱き締めたいんだけどどうしたらいい?」
「………」
「……明日まで我慢するしかないよね……」
「うん…だね…も、切るね……」
「わかった」
何時までも切れない──
電話口で二人で言葉を掛け合いながらやっとあたしは電話を切っていた。
切った電話を見つめてあたしは長い溜め息を吐いた…
めちゃめちゃ恋人同士の会話してるじゃんっ?
初っぱなからヤりまくりの日々だったから今の瞬間がかえって凄く新鮮だった……。
なんだがドキドキする…
夏希ちゃんと離れてみて初めてそんな気持ちがしてくる。
・
壁を向いてしばし怪しい笑みが浮かぶ。
やばいな…
職質されちゃう
「変態っ!」
「……──」
高槻が後ろにいた。
「電柱の影に隠れてその笑みはめちゃ危ないヤツだわ」
「ほっといて…」
「なに?恋人?」
「え?」
「電話の相手」
「え、うん…」
「夏希ってのが彼氏なんだ?」
「………」
「ま、いいや!付き合って一ヶ月ならまだ余裕あるしな」
「へ?」
「電話終わっただろ?店戻るぞ」
「ちょっ…」
高槻はあたしの腕を掴んで店の中へと引きずっていく──
店に戻るとご両人で逃げたとクラスメイト達が大騒ぎだった。捕まったあたしはまた酌の嵐を浴びさせられる。
酒豪でも蟒蛇じゃないからこれじゃ酔うってばっ…
目が回り掛けるあたしに水だと言って差し出された透明の飲み物は明らかに辛口すっきり味の日本酒で…
そんな酔いの輪廻から逃れられないあたしの太ももを、高槻はテーブルの下でずっと意味あり気に撫でていた──